その時、急に胸がドキッとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。
泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。
ああ、つらいつらい。
僕はもう虫を食べないで飢えて死のう。
いや、その前にもう鷹が僕を殺すだろう。
いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向こうに行ってしまおう。
サークルでよだかの星を、回し読みしながら、胸が詰まった。
泣いてしまいそうだった。
子供の頃、読んだはずの物語。
意味もせつなさも分からず読んでいた本に、大人になって再会する幸せ。
はじめましてのような感動がある。
醜いよだか。
よだかは、顔に味噌を塗ったような醜い顔をしていてみんなから疎まれている。
特に鷹からは、名前が似ているという理由で、理不尽にも、市蔵に改名を迫られる。
おまえは夜と俺から名前を借りている。
もしも変えなければお前をつかみ殺す。
殺されるくらいなら、一蔵でも全然いいと思うのだが、よだかは神様からもらった大切な名前を変えたくないのだ。
よだかは、なぜこうも周りに疎まれるのかと、一人悩み苦しむ。
うすぐらい空を、どうすればいいか分からず飛びまわりながら、喉に飛び込んできてもがき苦しむカブトムシを飲み込み、背中がぞっとする。
そこで、自分も命を奪って生きている事実に、気がつく。
生きるために、小さな虫を食べてしまう自分。
虫を飲み込むことを、辛いと感じてしまうほど優しいよだか。
自分の命は、ほかの命を身体に取り込んで成り立っているという事に悩む。
遠くへ行くことにして、ひとり飛び回る。
なにも悪いことなどしていないし、誰かを恨むわけでもない。
最後には美しい星になったよだか。
いのちをもらうということ。
最後まで、救いようもなくただただ悲しく、せつなく、そして美しい。
よだかは遠くの山で幸せに暮らしましたとは、ならなかった。
だからこそ、いつまでも心に残るのだろう。
よだかが、カブトムシを飲み込みながら、自分の罪に気づき泣く場面が、いつまでも頭の中に残った。
よだかの心の優しさについて考え、それを笑う周りの鳥たちのようになっていないか、考えた。
そして、最近は本を読むことが、本当に少なくなったけれど、時々はこうして本の世界に触れてみようと思った。
津軽カタリストの練習会。
たくさんの名作との出会いがある。
ココ