じいちゃん!どういう事なんだよあのりんごは!
なんとかいえよ!このくそじじい!
津軽カタリストの、次回公演で、自分がもらった、【オレ】という役のセリフの一部。
何回、言ってもしっくりこない。
どうやら、違うらしい。
本番は明日なのにどうしよう。
カタリストが、様々な場所に出向き、おこなうドラマリーディング。
声劇、朗読劇とも言うらしいが、朗読とは少し違う。
台本を読みながらする、「声のお芝居」と言った感じだ。
朗読といえば、どちらかというと、しっとりと上品に書かれた文字を読む、どこか平面のような感覚がするが、
朗読劇は、体の動きこそなくても、立体的で豊かな感情表現や、独特の「間」が求められる。
毎回、練習では、これでいいという感じがせず、課題を残したまま本番を迎える。
感情的に、言葉を発するのは、思ったよりも難しい。
何年も、先頭でこの活動を支えてきた、70代、80代の先輩方。
さすが、年季の入った見事な表現力で、回し読みをしながら、自分の番をうっかり忘れて聞き入ってしまうことが、何度もあった。
他にも、生まれながらの、独特の声をしている若い女の子。
本当に羨ましくなるような素敵な声をしている。
冒頭に書いたオレのセリフ。
このセリフは、言葉は荒いけれど、怒りではない。
怒っているのではなく、絶望している。
どうしようもない、悲しさ。
泣きたいくらいに辛い。
きっと、ずっと前から様々な感情が蓄積されて、泣きたかったオレ。
心の中の悲鳴。
この言葉を吐いたオレの気持ちを考えてみた。
本を読むと、自分以外の人生を感じる事ができるように、ドラマリーディングも
様々な登場人物の、心の動きを、毎回想像しながら表現するのが、面白い。
津軽カタリストは、まだ完璧ではない、不完全なままの、私のような最近参加した、全然へたっぴでも、本番のステージに立てる。
下手ながら本番で経験を積み、ベテランがまわりでカバーする。
参加条件は「日本語がよめること」
呼ばれればどこへでも行き、無料で公演をおこなう。
今回は、定番の太宰治ではなく、浪岡バサラ文学賞という過去に3回にわたり開催された、短編小説コンテストの受賞作品を読む。
多くの入賞作品と、一点の落選作品。
実は、今回、落選作品が、一番自分の殻を打ち破るのが難しい内容で、
なにしろ作者の目の前で読むので手を抜けない。
確実に、心臓が口から飛び出そうな90分になる。
ココ