このまえ、盛岡で一日、一人で自由に過ごせる日があった。
スマホでカフェや美術館なんかを調べまくって、いざ歩き始めたら、全然オシャレな場所や、観光するようなスポットに行くような気分じゃない事に気がついた。
なんなら、一日ベンチで座っていてもいいような気さえした。
でもそれは、いくらなんでも勿体ない。
その日は11月とは思えないくらい暖かくて、東北でこんないい天気は年内最後かもしれないと思った。
盛岡はとても素敵な街で、大好きだ。
目的地を決めずにひたすら歩くことにした。
できるだけグーグルマップを使わずに、行けるとこまで行って、もしどうしようもないくらい迷ったってタクシーにでも乗ればいい。
大人は知らない場所に行くと、お金さえ持ってれば、どうにかなるだろうと思えるからいい。
迷ったらスマホもあるし、なんとかなるだろう。
そうと決めたら、ちょっと楽しくなって、テンションか上がってきた。
自分の中で、今日のルールを決めた。
写真を撮りたいから、スマホのカメラは使うけど、マップは本当にどうしようもなくなるまで見ない。
岩手山が見えているので、そっちの方向にとりあえず歩き出した。
歩くつもりもなかったので、革靴を履いてきたが、どうにでもなれだ。
足が痛くて、くたくたになりたい気持ちもあった。
こういう事を、時々したくなる。
6月にも急に思いついて、一日中歩き28キロ歩いた。
その時は夫と一緒だったが、今回は1人だ。
自由に歩き回れる。
そういえば20代の頃から歩くのは好きだった。
知らない場所を適当な方向に歩くのは、冒険みたいでワクワクする。
結婚してからは転勤族で、引っ越しが数回あったし、これからもまだあるだろう。
そのせいか、ひとつところに定住するイメージが未だにない。
知らない土地を歩くとすぐに、
もしもこの土地で暮らすことになったらを妄想する。
今日引っ越してきたような気分で、歩く。
住宅街で、あまりキョロキョロしていると、不審者だと思われるとまずい。
さも目的を持っているかのような、迷いのない顔をして、どちらかに曲がる。
右でも左でも、行き先を決めてない私には正解なのだ。
日本中どこにでもある店。
ツルハ
・・・
当たり前だが、日本各地、その土地に暮らす人の日々の営みがあるし、どこも同じような店がある。
不安がることは何もないのだと、どこにでもある店を見つけるとホッとした心持ちになる。
小学校から子供の声がしている。
求人の貼り紙を真剣に見たりする。
この土地で働くとしたら、どこかしら?
色々考えながら、どんどん歩く。
信号待ちで少しぼーっとして立っていた。
目の前を左折で通りすぎる車から、助手席に乗っている女の子が顔を出した。
すこし身を乗り出したので、驚いた。
「その信号は押しボタンを押さないと、いつまで待ってても変わらないですよ。」
大きな声で教えてくれた。
考え事をしていたら、いつまでも信号が変わらない事に気がつかずに立っていた。
わざわざゆっくり走って、教えてくれた親切。
人の優しさに、幸せを感じる出来事。
嬉しさに、思わず頬がほころぶ。
数メートル笑いながら歩くおばさんは、ちょっと不気味だったかもしれない。
街中が、一番好きな色だらけになるのも秋。
公園を見つけるたびに、木の下で過ごす。
また歩き、次の木を探す。
公園のはしごをする贅沢な散歩。
公園で、面白い形の椅子に座る。
「お母さん見て見てなんだろうこの形」
「ひとでみたい」
幼かった子供。
やんちゃな息子なら、この椅子を見て、きっとそういう事を言っただろう。
そして、いっときも、じっとしていられなかっただろう。
考えてみると、驚くほどに子育てというのは一瞬だった。
面白い形の椅子に、一人ゆっくり座りながら思う。
とりとめもない事を考えながら歩き回る。
迷うたびに、岩手山と線路を目印にしながら、歩き続けた。
山は方向を知るのに便利だ。
途中、飲み物を買いに入ったコンビニで、盛岡名物らしいコッペパンが売っていた。
一つ買って食べた。
パンが好きなので、ちょうどいい。
おしゃれなカフェは、この次の楽しみにしよう。
疲れた足に甘いパン。
ベンチでパンを食べた瞬間に、足がじわんとした。
今年は、遅くまで、季節が秋でいてくれたので、穏やかな天気の中、最高の
大人の遠足ができた。
2日後に筋肉痛でした。
ココ