ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

渋い。男はおじさんになってからがかっこいい。

かっこよ!

真剣な顔でなにかをしていてそれが終わる。

それまでの張り詰めた緊張感から解放されて一気に自分を取り戻す瞬間。

思わず頬がゆるむような喜びの表情。

少し前までとはうってかわってリラックスして素の顔に戻る中年男性。

それを斜め後ろくらいから見ている。


想像するとちょっと萌える。

すてきなひと1。




今まで見たおじさん達の中でとても素敵だった人がいる。

我が家の今は元気いっぱいの次女。
生後1ヶ月で心雑音を指摘されそれからしばらく入院した。
深刻な気持ちになっている私に担当医は何度も様子を見に来ては説明をしてくれた。

先生はいったいいつ家に帰っているのだろうと不思議に思うほどいつも病院にいる。

朝も昼も夜中も病院内で見かける先生を見ているとお医者様はなんて激務なんだろう。
家族はいつもさびしいだろうなと思っていた。

自分の家族と過ごす時間はすごく短いのではないか。


そんなことが気になるほど先生はいつも患者と寄り添ってくれていた。


kanahebijiro.com



1ヶ月半ほど入院した後、いよいよ東京の病院の手術が決まった。

私のいる東北の病院から東京の心臓専門病院までの長い道のり。
なんとその先生は我が家ともう1人の患者の為に東京まで付いてきてくれた。


東京駅の雑踏の中、旅行会社の添乗員さんのように前を進む先生。
気が付くと患者の荷物まで持ってくれている。
新幹線から医療タクシーに乗り換え病院までの道のり。

てっきり仕事でやっているのかと当時は思っていたが、あとから聞いたら完全に休みを使って個人的に同行していたらしい。

心細いだろうし。
心配だし。




普段は本当に地味でオシャレには全く興味がないくまのプーさんみたいな先生。
日曜に病院に来るときはいつも色のさめたポロシャツを着ていた。

前の日に東京に行くからって新しいポロシャツを買いにユニクロに行ってたのよ。
後から看護師さんは笑いながらそんな事を教えてくれた。


東京の病院で様々な手続きが終わり先生はトンボ帰りで戻って行く。


「じゃ頑張ってね!ここまで来たら大丈夫だから。」

先生が帰ったあと。
私は少し落ち着いてから病院の近くのコンビニに買い出しに出かけた。
不安と緊張はあったが良くなるために来ているのだ。
私がしっかり腹ごしらえしなければ・・・


病院の前は綺麗な花壇があって遊歩道のようになっていた。
その花壇を眺めながら歩いていると視線の先に見慣れたシルエットがあった。

少し前に別れた先生が帰りがけのコンビニの前。
今まさに缶ビールをあけ口をつけて飲むところだった。

それは後で聞くと無事に送り届けた後の先生の恒例行事で、毎回のように自腹で同行し東京の病院を後にしてからホッとして飲むビールが最高においしくて至福の時だったようだ。


疲れてはいるが満足そうな表情でビールを飲んでいる先生。
傍から見るとまったくお医者様には見えない。
昼間っからコンビニの前で立ってビールを飲んでいるおじさん。

患者を無事送り届けた安堵感でほっとしている素の顔だった。
時計をちらっと見て、駅までの道を歩き出すまでの短い間。
影から先生を見た。

ものすごい人に見えないけれど、こんなにも人のために動ける人。
優しい先生のささやかな楽しみ。
本当に素敵な姿だと、ありがたい気持ちでそれを見た。

すてきなひと2。




移動から二日後。
何度も検査や説明だったり、何枚もの同意書にサインをして手術の日を迎えた。
心臓に生まれつき空いている穴にパッチを当てて穴をふさいで縫う。
聞いただけで恐ろしいと内心思ったが、ここで毎日行われる手術の中では簡単なほうにはいる。


前の晩。
病室に執刀医の先生が訪ねてきた。
渋い中年男性。
ニコニコしながら緊張させない感じでするっと部屋に入ってきた。



1年に約700件、20年以上も執刀をしているという凄い人。
先生の手術を受けるために全国から訪ねてくる子供がいる。


「なにか気になることはないですか?」
「たとえば田舎で心配しているお年寄りがいたら電話してどんなことをするか説明してあげますよ。」
「簡単な手術って言われても赤ちゃんだものそりゃ怖いよね・・・」



そこまで言ってくれることに正直びっくりしたし凄い人なのにめちゃくちゃ優しくて全然偉ぶらない。

次の日。


予定時間よりかなり早く終わった。
このスピードが凄くて、全国からこの先生の手術を受けに患者が来るという。
小さな体にメスを入れる負担がかなり少なくすむのだ。



先生が手術着で出てきて
成功しました。もう大丈夫です。

ドラマでよく見るあのシーン。
前日の話しやすさとはまったく違うオーラ。

安堵感。
泣きたいくらいの感謝。
惚れてしまいそうなカッコよさ。





仲良くなった看護師さんが教えてくれた。


手術が終わり部屋に戻ると、先生は一旦パソコンの前に座る。
そして何事も無かったかのようにおもむろにゲームのソリティアをするという。
それがものすごくかっこいいんだよ。

想像するだけで超絶かっこいい。

クールダウンのような感じらしい。



じばらく入院したのち最後の日に先生は言った。

間違ってもおじいちゃんおばあちゃんに言われても田舎からお礼は送ってこないでくださいね。
二度とこの病院に戻ってこないことが私にとって1番嬉しいことです。
そう言い送り出してくれた。
最後までかっこいい。



あれからかなりの月日がたったがどちらの先生も未だ病院で活躍されている。
地元の先生は今でもビールが好きなのだろうか、
そして手術をしてくださった先生はソリティアをしているのだろうか、
ふと懐かしくなる。



すてきなひと3。




以前住んでいた街で、何度かお世話になった自転車屋さん。


修理が上手くて丁寧な職人さんといった感じのおじいちゃんがやっている。


「そこに座って待っててね。」


目の前の年季の入った椅子に座って作業を見ているとおもしろい。
手慣れた感じでタイヤの中から取り出したチューブを水につけて穴の開いた箇所を探す。
「ほれ、ここにちっこい穴があった」

説明しながら丁寧に治してくれる。
頼んだ箇所以外にも調子が悪い所がないか見てくれて、おまけに料金も安い。

「600円でいいよ」
表に書いてる値段より毎回安く、こんな調子なので大した儲けにならなそうだがそれでいいのだろう。
たぶん80歳後半だと思う。

急いでいる人は向いていないような店だったが腕は確かだった。


そのおじいちゃん。


自転車を直していない時はパソコンを開いていつもソリティアをやっていた。

自転車屋さんの前を通るとソリティアをやっているおじいちゃんが外から見える。
おじいちゃんんもソリティアでクールダウンしているのだろう。

心臓の穴をふさぐドクター。
タイヤに空いた穴をふさぐおじいちゃん。
同じソリティアをやっている。


仕事をしていない時の顔。


真剣なまなざし。








やはり男性が素になっている表情。




ちょっと萌える。





ココ