ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

憧れたおはなしの中の食べ物たち。

小さい頃本が好きで色々な本を読みながら、そこで登場する食べ物の味をよく想像した。
ぐりとぐらの焼いたふかふかのカステラ。
マッチ売りの少女が幻想で見たテーブルに並ぶたくさんのご馳走。
ハイジのパンとそれにのせたとろーりとしたチーズ。
よく出てくる干し肉、葡萄酒。
虎がぐるぐる回ってバターになってホットケーキにかけて食べた話も好きだった。


娘も私も憧れたのみもの。

私が子供の頃読んだたくさんの本。
奇跡的に夜逃げにも結婚にも転勤にもずっとついてきていた少し黄ばんだ本達。
今は捨ててしまったが長女は小さい頃、暇さえあればそれを読んでいた。



大人になった長女と昔読んだ物語の中の食べ物の話で盛り上がる。



その中でもめちゃくちゃ飲んでみたかったものがあった。
赤毛のアンで出てくるいちご水だ。


孤児院育ちのアンが手違いで男の子が欲しかった家に引き取られ色々あって暮らし始める。
アンは初対面でけなしてきた近所のおばさんにブチ切れてめちゃめちゃ失礼なことを言い返したり、
自分の赤毛をにんじんと男の子にからかわれ相手の頭を石版で叩いたりなかなかに激しい性格だ。


ハイジもそうだが童話の女の子は自由奔放であまりものを知らなくて素直に生きている感じが気持ちがいいし好きだった。



アンは色々なことを経験しながら暮らした。
ある日、大親友のダイアナをもてなそうといちご水を振舞う。
おばさんにきちんと相談して決めた渾身のおもてなし。
でもアンが出したそれはいちご水ではなくて葡萄酒で、ダイアナは美味しいとどんどん飲んでしまう。

私の知っているいちご水と全然違うわと言いながら3杯も葡萄酒を飲んだのだからダイアナは将来はけっこういけるくちだろう。

アンはりんごを食べすぎておなかいっぱいだったのでイチゴ水を飲まなかった。
飲んでないのでイチゴ水が実は葡萄酒だったことに全く気が付かなかった。
ダイアナは具合が悪くなって帰り、以後アンとは付き合わないように言われてしまう。


子供心に、全然悪気なくやったことがこんな事になるなんてと思いながら読んだ。

「アンかわいそう・・・」


そしてこのいちご水という魅力的なネーミングがやけに心に残った。
どんな味なんだろう、、、?
甘いんだろうか。
今でも気になる。



今では娘もワインをいくらでも飲める酒が強い大人になったが、
やはり当時私と同じようにいちご水に憧れを持っていたようでめちゃくちゃ盛り上がる。


食べてみたいがまずそうだ。



ものを食べたいというのは一番分かりやすい欲求でそこが満たされると単純に嬉しい。


スーパーで食べ物を見て歩いてる時。
おいしいに決まっている手が出ないくらいの高い肉だったり、大間のマグロだったりを横目にしながら素通りする。

特売の豚こまともやしをカゴに入れて半額のパンなんかも買う。
腹が減って車で半額のパンをむしゃむしゃ食べたりするとなんとなくわびしかったりするが、それでも腹が満たされると人は元気になる。


あんがい豚こまともやしだってやり方次第では美味しいおかずになるしそれが日常だ。
毎日がハレの日ではなくて、ほとんどが日常のケの日なのだから普段の食事なんていうものはそれでいいのだ。



むかし読んだ本に芥川龍之介芋粥がある。


時は平安時代
身分が低く不器量で同僚や近所の子供にまでバカにされていた主人公の男。
彼はなにかに腹を立てるという感情を忘れているくらい意気地のない男だった。
どんなに理不尽なことがあっても誰にも言い返せない。
気が小さい男には密かな楽しみがあった。

たまに宴会で出される芋粥が大好物でいつか腹いっぱい食べたいと思っていた。
芋粥にいつか飽きたいという欲望を唯一心に抱き、それを大事に守っていた。

ある日の宴会で、腹いっぱい食べてみたいと独りごとを言ったのが将軍利仁の耳に入る。


少し小馬鹿にしたような態度で
「私が満足させて見せよう」という利仁。
後日、半ば強引に長い道中を連れていかれ、利仁の大きな屋敷に泊まる。


あれほど楽しみにしていた芋粥
なのに前日に下男達が大量の芋を準備している舞台裏を見て夜明けが怖くなってくる。


釣り合いの取れない不安。
芋粥を食う事になるという事がそう早く来てはならないという心持ちがする。
明日になって欲しくないとそわそわしている。

次の日に出された大鍋にいっぱいの芋粥を前にして、完全に食欲が失せてしまう。
遠慮は無用じゃと言われても本当にまったく食べられず、そこに狐が現れて皆の注意がそちらにそれたので食べずにすんだ。



子供心に何故だと思って読んだ。
食べればいいのに・・・

あんなに楽しみにしていたはずが芋粥を出されてわずかしか食べられなくなった男。
たぶん当時は読んでも半分も意味が分からなかった。


50台になった今なら痛いほどわかる気持ち。
場違いで緊張する場所で喉を落ちて行かないご馳走。




そして、まずそうなワードの芋粥という料理。
どんなものなのかだけがめちゃくちゃ気になった。



平安時代ならきっと貴重な憧れのご馳走だったのだろう。

山の芋を甘葛の汁で煮た粥で主に客をもてなすためのものだったらしい。
芋粥を飲むと表現されていたからつるっと飲む感じなのか。




ご馳走はたまに食べるから嬉しい
なのか
気兼ねしているとご馳走も喉が通らない
なのか
はたまた夢は叶うまでが幸せでいざ叶ってしまうとガッカリ
なのか


本は面白い。



物語に出てくる食べ物。
大人になって読むとまた違う感想になっているのかもしれない。

また読み返してみたい。

kanahebijiro.com



そういえばあれも本当に美味しそうだった。

日本昔ばなしに出てくる

おっかあ、あんころもちが食いてぇと言ってふんどしを投げると
空から降ってくる重箱にぎっしり入ったあんころもち。



なつかしい。

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