私について

憧れたおはなしの中の食べ物たち。

私について

小さい頃本が好きで色々な本を読みながら、そこで登場する食べ物の味をよく想像した。
ぐりとぐらの焼いたふかふかのカステラ。
マッチ売りの少女が幻想で見たテーブルに並ぶたくさんのご馳走。
ハイジのパンとそれにのせたとろーりとしたチーズ。
よく出てくる干し肉、葡萄酒。
虎がぐるぐる回ってバターになってホットケーキにかけて食べた話も好きだった。


娘も私も憧れたのみもの。

私が子供の頃読んだたくさんの本。
奇跡的に夜逃げにも結婚にも転勤にもずっとついてきていた少し黄ばんだ本達。
今は捨ててしまったが長女は小さい頃、暇さえあればそれを読んでいた。



大人になった長女と昔読んだ物語の中の食べ物の話で盛り上がる。



その中でもめちゃくちゃ飲んでみたかったものがあった。
赤毛のアンで出てくるいちご水だ。


孤児院育ちのアンが手違いで男の子が欲しかった家に引き取られ色々あって暮らし始める。
アンは初対面でけなしてきた近所のおばさんにブチ切れてめちゃめちゃ失礼なことを言い返したり、
自分の赤毛をにんじんと男の子にからかわれ相手の頭を石版で叩いたりなかなかに激しい性格だ。


ハイジもそうだが童話の女の子は自由奔放であまりものを知らなくて素直に生きている感じが気持ちがいいし好きだった。



アンは色々なことを経験しながら暮らした。
ある日、大親友のダイアナをもてなそうといちご水を振舞う。
おばさんにきちんと相談して決めた渾身のおもてなし。
でもアンが出したそれはいちご水ではなくて葡萄酒で、ダイアナは美味しいとどんどん飲んでしまう。

私の知っているいちご水と全然違うわと言いながら3杯も葡萄酒を飲んだのだからダイアナは将来はけっこういけるくちだろう。

アンはりんごを食べすぎておなかいっぱいだったのでイチゴ水を飲まなかった。
飲んでないのでイチゴ水が実は葡萄酒だったことに全く気が付かなかった。
ダイアナは具合が悪くなって帰り、以後アンとは付き合わないように言われてしまう。


子供心に、全然悪気なくやったことがこんな事になるなんてと思いながら読んだ。

「アンかわいそう・・・」


そしてこのいちご水という魅力的なネーミングがやけに心に残った。
どんな味なんだろう、、、?
甘いんだろうか。
今でも気になる。



今では娘もワインをいくらでも飲める酒が強い大人になったが、
やはり当時私と同じようにいちご水に憧れを持っていたようでめちゃくちゃ盛り上がる。


食べてみたいがまずそうだ。



ものを食べたいというのは一番分かりやすい欲求でそこが満たされると単純に嬉しい。


スーパーで食べ物を見て歩いてる時。
おいしいに決まっている手が出ないくらいの高い肉だったり、大間のマグロだったりを横目にしながら素通りする。

特売の豚こまともやしをカゴに入れて半額のパンなんかも買う。
腹が減って車で半額のパンをむしゃむしゃ食べたりするとなんとなくわびしかったりするが、それでも腹が満たされると人は元気になる。


あんがい豚こまともやしだってやり方次第では美味しいおかずになるしそれが日常だ。
毎日がハレの日ではなくて、ほとんどが日常のケの日なのだから普段の食事なんていうものはそれでいいのだ。



むかし読んだ本に芥川龍之介の芋粥がある。


時は平安時代。
身分が低く不器量で同僚や近所の子供にまでバカにされていた主人公の男。
彼はなにかに腹を立てるという感情を忘れているくらい意気地のない男だった。
どんなに理不尽なことがあっても誰にも言い返せない。
気が小さい男には密かな楽しみがあった。

たまに宴会で出される芋粥が大好物でいつか腹いっぱい食べたいと思っていた。
芋粥にいつか飽きたいという欲望を唯一心に抱き、それを大事に守っていた。

ある日の宴会で、腹いっぱい食べてみたいと独りごとを言ったのが将軍利仁の耳に入る。


少し小馬鹿にしたような態度で
「私が満足させて見せよう」という利仁。
後日、半ば強引に長い道中を連れていかれ、利仁の大きな屋敷に泊まる。


あれほど楽しみにしていた芋粥。
なのに前日に下男達が大量の芋を準備している舞台裏を見て夜明けが怖くなってくる。


釣り合いの取れない不安。
芋粥を食う事になるという事がそう早く来てはならないという心持ちがする。
明日になって欲しくないとそわそわしている。

次の日に出された大鍋にいっぱいの芋粥を前にして、完全に食欲が失せてしまう。
遠慮は無用じゃと言われても本当にまったく食べられず、そこに狐が現れて皆の注意がそちらにそれたので食べずにすんだ。



子供心に何故だと思って読んだ。
食べればいいのに・・・

あんなに楽しみにしていたはずが芋粥を出されてわずかしか食べられなくなった男。
たぶん当時は読んでも半分も意味が分からなかった。


50台になった今なら痛いほどわかる気持ち。
場違いで緊張する場所で喉を落ちて行かないご馳走。




そして、まずそうなワードの芋粥という料理。
どんなものなのかだけがめちゃくちゃ気になった。



平安時代ならきっと貴重な憧れのご馳走だったのだろう。

山の芋を甘葛の汁で煮た粥で主に客をもてなすためのものだったらしい。
芋粥を飲むと表現されていたからつるっと飲む感じなのか。




ご馳走はたまに食べるから嬉しい
なのか
気兼ねしているとご馳走も喉が通らない
なのか
はたまた夢は叶うまでが幸せでいざ叶ってしまうとガッカリ
なのか


本は面白い。



物語に出てくる食べ物。
大人になって読むとまた違う感想になっているのかもしれない。

また読み返してみたい。



そういえばあれも本当に美味しそうだった。

日本昔ばなしに出てくる

おっかあ、あんころもちが食いてぇと言ってふんどしを投げると
空から降ってくる重箱にぎっしり入ったあんころもち。



なつかしい。

                  ココ



































コメント

  1. ココ より:

    primex64様
    芋粥をご存じなんですね(*’ω’*)
    美味しいとは思えなくとも懐かしさで食べたいものって
    思い出とセットであるような気がします。

  2. ココ より:

    やよいさん
    やっぱりあのチーズはやけにおいしそうだったよね(*´Д`)
    イチゴ水も名前が印象的だよね。

  3. ココ より:

    マーシャさんいつもやさしい言葉ありがとうございます。
    とてもあたたかな気持ちになります(*´Д`)

  4. primex64 より:

    田舎出身なので、芋粥に類した料理はたくさん知っています。幼少期はとてもじゃないけれど美味しいとは思わなかったです。が、今は、当時を模倣して、っていうか思い出しつつ手探りで似たようなものを作ったりしてます。これって原風景なのかな・・?

  5. やよい より:

    絵本やアニメやドラマに出てくる食べ物。
    私もハイジのおじいさんが作るとろぉ〜りとしたチーズ。
    これは美味しいだろうと思って見てました。
    赤毛のアンはアニメでもありましたね。
    ダイアナが、美味しいと言って飲んでいたのはお酒だったと。
    いちご水。
    ネーミングだけでもいちごの香りがする飲み物だろうと想像しちゃいます。

  6. きままなマーシャ より:

    お加減いかがですか?
    季節の変わり目でもあって
    なにかと不調になりますね。
    くれぐれもお大事になさってください。

  7. ココ より:

    マーシャさんこんにちは。
    食べ物って思い出とセットになってたりしますよね。
    今食べるとそんなに高級じゃなかったジャンボシュークリームが、10歳くらいの時は
    物凄くたまにしか食べれないものって気がした美味しかった思い出です(^^♪

  8. ココ より:

    Nick Ollieさん
    フレンチは美味しいはずなんだけど状況に寄るよね。
    私も何回も転勤引っ越しで新しい土地でランチに誘われて、「おや?」ってほどおしゃれな場所だったとき
    フォークの背中にライスを乗せて器用に食べてるの見て、場違いな場所に来てしまったって思った(笑)

  9. ココ より:

    akazukinさん
    本当に私たち幼い頃からあった絵本の作者の方ですもんね。
    そらいろの種も好きでした。
    物語の食べ物。
    食べたいのたくさんです(笑)

  10. ココ より:

    ぽぱいさん
    ハイジはラクレットチーズなんですねー(*´з`)
    あのとろーりをパンにのせて本当においしそうだったなあ。
    私も仰天したい(^^♪

  11. ココ より:

    雉虎細魚さん
    あのおむすびねー。
    再現できないかんじ(*´з`)
    竜宮城は刺身とか出るのかな・・・

  12. 雉虎細魚 より:

    幼少期の絵本に出てきたおむすびころりんのおむすびを一度食べて見たい。あと、竜宮城のおご馳走(笑)

  13. ぽぱい より:

    ハイジが食べていたというラクレット。
    初めて食べた時はその旨さに仰天したのを覚えていますよ😃

  14. AKAZUKIN より:

    ぐりとぐら、大好きだったなぁー。
    山脇百合子さん、お亡くなりになられましたね・・
    ハイジの白パンも憧れました。
    ほんと物語の中の食べ物って美味しそうですよね。
    あとジブリのアニメの中の食べ物も!

  15. Nick Ollie より:

    すんごい憧れてたフレンチに行ったら、緊張しすぎて、ナイフやフォークにも慣れてなくて、美味しかったのだかどうだか、何を食べたのかすら覚えてないのに似てるかな。

  16. きままなマーシャ より:

    子供の頃においしい。って思ったものって
    いつまでも大好きだったりします。
    それがただのお菓子だったとしても。
    そしてステキなシーンとともに思い出に残るものは
    今も特別感があります(*^^*)

  17. ココ より:

    坂田さんこんにちは。
    わかりますー小池さん。
    ラーメンやけに美味しそうなんですよね(*´з`)
    マンモスのお肉も一度は食べたいと思ってました。

  18. ココ より:

    アスポンさん
    確かに毎日あんころモチって・・・
    いくらなんでもありがたみが消えそうですね(*´з`)
    寅之助のバター
    ぐるぐる回ってるの想像すると可愛いです(=^・^=)

  19. 藤子・F・不二夫先生作品のラーメン小池さんのラーメンが美味しそうでした、そして、はじめ人間ギャートルズのマンモスのお肉も美味しそうでした!

  20. 絵本や小説に出て来る食べ物は興味深いですね。
    私はちびくろサンボの虎がバターになりホットケーキに
    かけて食べるという話が大好きです。
    我が家の寅之介がバターになるのを想像して楽しいです。

    ハイジの白パンは、パン屋さんにハイジの白パンは
    あるかしつこく聞いたら、
    しばらくたって、ハイジの白パンとかかれた白いパンが
    店に並びました。

    あんころもちこぞうは、フンドシに包まれている重箱なのが、笑えますね・・・(;・∀・)

  21. 赤毛のアンに出て来るイチゴ水は、
    興味を持っている人が多い代物ですね。
    ラズベリーコーディアルといって木苺の砂糖漬けシロップだと
    教えてもらった事があります。
    赤毛のアン イチゴ水と検索するとクックパッドにも再現レシピが出てきます。

    イチゴ水のエピソードでは理不尽な大人が出てくるなぁと思いました。アンに悪気はないし、アンばかりが悪いのではないです。

    ダイアナが飲んだ葡萄酒とイチゴ水はだいぶ味が違います。
    知っているイチゴ水との違いにダイアナは気付きながら、極端に違う事を疑問に思い飲用を止めないのもおかしいと私は思います。
    酒を飲んだ経験はなくとも、飲物の味が、そんなに違うなら腐敗の可能性に思い至らないのはバカだと思うし、危機管理能力が無さ過ぎます。本人責任も重いと思いました。

    芋粥をたくさん御馳走される事になったのに、主人公は、将軍様の用意して下さった芋粥を食べれないなんてもったいないです。
    身分の低い人にとって、あまりにも将軍とか身分の高い人からふるまわれた物は緊張して食べれなかったという事なんですね。
    芋粥という芥川龍之介の小説の存在は、知ってましたが、
    内容までは知りませんでした。

    芋粥なんて、貧乏くさい料理だなぁと、思っていた程度でした。
    なんだか小市民の心理を表現したエピソードですね。

    日本昔話にも、そういえば食べ物出てきますね。
    あんころもち→おはぎ??
    「 あんころもちこぞう」の母親が毎日あんころもちを作るのはビックリです。
    お母さんは亡くなったけど、小僧があんころもちを食べたがってますね。あんこは私も好きだけど、そこまではいかないです…(^^;

  22. ココ より:

    まべさん本当にそうですよね。
    いつもの白飯が結局一番「うめえ」って思ったりします^m^

  23. まべ より:

    気兼ねすると喉を通らない、まさしくその通りで
    何を食べるかではなく、誰と食べるか
    そこに食の真髄がある気がしますね

    憧れるキラキラした美食 も日常を離れた旅行では良いですが
    心が満たされる瞬間というのは、温かいお味噌汁だったりする私

  24. ココ より:

    まさるさんそうなんですよ。
    適当に楽しんで食べて帰ってくてばいいのにって思いながらも
    なんか分かるような・・・😉

  25. うりまさる より:

    満たされていないって事は幸せなのでしょうね。
    満たされていないから、満たされたいと願う力が出てくる。

    その人は、密かな楽しみが、無くなってしまう恐怖を知っていたのでしょうね💦
    適当な事言っとけば良いのに…実直なのでしょうね(●´ω`●)✨

  26. ココ より:

    芋粥って言葉がそそらないですよね(-_-)
    小池さんのラーメン美味しそうですよね。特に夜中見ると(*´з`)

  27. 土偶のどっ子 より:

    芋粥かぁ。一度食べてみたいです。平安時代だからおいしかったけど、今の時代だと、どうなんでしょうね。おいしい…とはならなさそう(笑)
    絵本じゃないけど、ドラえもんに出てくる小池さんがいつも食べているラーメン🍜食べたいなぁって思ってました。

  28. ココ より:

    ですよね~☺
    赤毛のアン懐かしくてもっかい読みたくなりました。

  29. ココ より:

    マンモスの肉
    すごくそそられました☺

  30. ココ より:

    鳥天さん☺あの絵本のケーキの可愛さとおいしそうな感じは再現したくなりましたよね!

  31. たき子 より:

    赤毛のアン好きだから私もいちご水に憧れたなあー。
    まちがって薬いれちゃったレアケーキとかもあこがれてたわ(*´艸`*)

  32. ひでぴん より:

    こんにちは。
    読んでいて、自分も子供の頃の頃のことを思い出してしまいました。
    僕の場合は「はじめ人間ギャートルズ!」に出てくるみんながおいしそうにがっつくマンモスの肉がたまらなく魅力的に見えましたっけ。😅
    ココさんと同じく、ハイジのパンに焚き火で被ったとろーりチーズはほんとによだれモノでしたね😁

  33. 鳥天 より:

    大人になったら食べるぞ!と思っていたお話の中の食べ物たち、永遠の憧れよね。
    ちびくろサンボのホットケーキとバター、あれはみんな憧れるよね!
    息子たちに自分が好きだった絵本買おうと思ったら、言葉狩りに遭って差別用語を使っているってことで廃刊になっていた( ;∀;)
    一番食べたかったのはハンス・フィッシャーのたんじょうびに登場するクグロフケーキ。大人になってケーキ型まで買ったわ(*´艸`)

  34. ココ より:

    本当!
    虎からバターとれるってうっすらと信じましたよね(^^♪

  35. ココ より:

    たまぞうさんのイチゴ水とほぼ一致(^^♪
    うっすい感じがしますよね(;´・ω・)

  36. スティンガー五郎 より:

    冒頭の虎がグルグル回ってバターになっちゃうのって、ちびくろサンボですよね?
    子供心に本当に美味しそうで、バターは虎から取れるんだ!と大気圏へ飛ばされるほどの勘違いを植え付けた、心憎い絵本でした。

    あの本と出会ってからというもの、ホットケーキの虜です。

  37. たまぞう より:

    いちご水、ホントどんな味なんだろう!
     なんとなくイメージとしては、かき氷にかけるイチゴシロップの薄いやつ…
     という貧困なイメージしかないけど、その本の時代にそんなものがあるはずもなく…
     気になる…/笑