生きる

アラフィフおばちゃん研修中。

生きる

その気になれば人間、何でもできるとは言うけれど、なかなかその気になれないのが去年だった。
ずっと働きたいと思いながらなかなか一歩が踏み出せず・・・

じぶんもなにかをがんばりたいけれど

四月に引っ越しをして娘は新たな場所にすぐに馴染んだ。
夫も中堅の世代で忙しく朝早くから仕事に出かけ、非常に感謝している。



生活も落ち着いた。

さて自分もこうしてはいられない何か見つけなければと思い、最初は張り切って
求人やボランティアと随分色々な情報を見まくっていた。


ありがたいことに失業保険が出たので、焦って何かを決めなければならないという訳ではない。

高校生の娘。
色々あってコロナも心配。
家族に迷惑をかけずに家計の足しに働きたい。
体も衰えてはきたがまだ頑張りたい。

お金だけじゃなく、自分で自分を認めたいとでもいうような気持ち。
改めて自分が何をしたいのかと、何ができるのか。
なんだか嫌になってしまうくらいなんにもできない50代の自分。




ちょっとへこむ。





ヒトと比べる。

この年齢になって、求人を見ていると自分もなにかきちんとしたキャリアを積めばよかったとぼんやりとした悔いを感じる日々だ。



幼なじみは学校を卒業してからずっと、同じ勤め先で事務の仕事を続けているので30年以上も同じことをしている。
高校の先生で管理職をやっていたり、ベテラン看護師をしている友人もいる。
逆にたくさんの職業経験があって、転職なんてへでもないと軽々と辞めてはすぐに次の仕事を決めて働く友人もいる。器用なんだろう。
久しぶりに連絡を取った年下の友人は40代で一念発起して看護学校に通っていて驚いた。


歩んできた人生が人それぞれなのだから違って当たり前なのだが、
50代とは色々な事を考える時期なのかもしれない。

みんな凄いなとちょっと焦った。


私は専業主婦だった時期も長く、転勤族なのでちょこちょこと働いていた。
その都度頑張ってはいたが、自分の強みは何もないような気がした。


いまさらしょうがないので自分にできることで何か見つけようと思った。
農業バイトにも行ってみた。
そこは楽しかったが、たまたまそこで宗教に勧誘されちょっと足が遠のいた。

過去にこんなに仕事を決めるのに悩んだことはなく、ノリとテンションで決めてきたようなところもあった。

暇さえあれば求人を見てもなんだか躊躇する気持ち。
これが更年期ってやつなのか。

いやいや、負けてはいられない・・・


それにしても、

今はなんでも機械化されていて私のようなおばさんのパートの求人が少なくなった。


レジはセルフだし、配膳もロボット。
ニンゲンはもうそれほどいらないのだろう。
早朝の清掃なんてのもあって、運動不足解消にもなっていいと思ったが、
急に子供が熱を出したりしてシフトに穴をあけそうな子育て中の主婦よりは、
ターゲットはシニアの方が歓迎

早朝ブッフェの配膳の求人は中国語や英語などの語学が堪能な方歓迎
今どきは、なにかこれといった強みが必要なのだろう。


自分の空いた時間で働きたい。
でも休みは欲しい。
わがままなおばさんは、うだうだと悩んでばかりいた。






50代でもおねえちゃんと呼ばれちゃう現場。

年が明けてこのまま考えてばかりいてもしょうがないので、とりあえず近くのりんご倉庫でバイトを始めることにした。
ありがたいことに比較的休みやすい環境。

家でネガティブになっていてもろくなことはないので、なんでもやってみようと思って申し込む。




面接の時見せてもらったベルトコンベアーに乗ったりんご。

最初は社会科見学のような野次馬根性で楽しんで見ていた。
奥に進み作業する人を眺めながらあんなに素早い動きが私に出来るだろうかと思った。
「すみません間違いましたやはりできないかもです」
内心そんな一抹の不安と後悔を感じながらも、何事も経験だ。
とりあえずやってみることにした。





習うより慣れろとはよく言ったもんだ。

若者、同年代も多いがベテランの中には60代や中には70代の大先輩が、元気に働く現場。
どこから見てもおばあちゃんな感じの人もいる。
今のシニアはよっぽど自分らより元気だ。

歩くときはゆっくりだったのに、いざはじまると機械のような素早さで選別する熟練の技。
動きに無駄がなく惚れ惚れするほどかっこいい。



初日にやり方をいちいちメモを取っていたらバッサリ言い放たれた。

「書いてる場合じゃないから。そんなもんいらん。頭じゃなくて、体を使って手に覚えさせるんだよ」


私が箱に並べたリンゴを見て
「はい、全然ダメだ。」

容赦ない。


人がパッと見た瞬間に一番目につく場所に美しいりんごを並べる。

形がゆがんだり、凸凹しているものを隣同士に置くと微妙にお互いが干渉して
ぶつかってしまうので、二個一緒に持ってどこかしっくりくる場所に二つを離して
入れ直すと必ずうまくいくそのりんごに似合う場所が見つかるという。
パズルのような動きだ。

りんごにも面長だったり、ちょっとゆがんでいたり、濃い真っ赤だったり、色が薄かったり
小さな傷があったり、それぞれに個性がある。
それをランク分けして選別。


それぞれの等級を一瞬で分かるようになるには、何年も毎日のように見て触って
目と手で覚えていくしかないのだろうが、今まで気にしてなかったものを
こうやって気にして観察してみるとなかなか面白い。





「はいこれだめ。不合格。」
「いちいち気にするなよ。」
「新人なんだから最初は出来なくて当たり前。」
「ハイやり直し。」


ほぼこのやり取りを繰り返しながら汗をかき動いていると
あっという間に時間が過ぎる。

へこみながらおばちゃん新人は動き回る。
きっと無駄な動きが多くてだから疲れるのだろう。


戦力になっているのか非常に不安ではあるが、いい汗かいてお金をもらっていると思えばありがたい限り。


「だれでも最初は一年生なんだからね。ファイトファイト。」

優しいリーダーはこんなことを言ってくれる。



朗らかな人。
慣れない新人をサラッと助けてくれる人。

半面。
やけに人に厳しい人。
まったく挨拶をかえさない人。
いつもなんか怒ってる人。


怖そうだけど話してみると案外優しい人。
のんびりマイペースな人。


例外なくどこにでも、いろいろな性格の人がいるものだ。
これは過去に何度も引っ越しをしたのもあって、多少は免疫もあるほうかもしれない。
引っ越し人生。
なんでも無駄にはならないものだ。




「そろそろトイレに行ってきて」
疲れただろうと気を遣って、こっそり耳元でそんなことを言ってくれる優しい人までいる。



おばさんは開き直れるのが強みなので、恥ずかしげもなく何度でも同じ事を聞く。
研修バッチをつけているのをいいことに堂々と聞ける根性。
出来れば永遠に研修バッチをつけていたい。

「何回もすみません。これどうですか?合ってるか見てもらえますか?」


60代後半の元気な大先輩は張り切って何度でも教えてくれる。



「おねえちゃん。ちがうちがう、めんこい美人のりんごをこごさいれるのさぁ。
まだまだセンスねぇなぁ。はっはっは。」

50代になっておねえちゃんと呼ばれるなんて思っていなかったが、若造感いっぱいで毎日過ごしていると自分が若くなったような錯覚さえ覚える。

それにしても、りんごの世界にもこんな一軍二軍と序列があったなんて。
センスと見る目を磨くにはまだまだ時間がかかりそうだ。



そして、リンゴも人間も同じ。
合わない同志が隣に並ぶとぶつかってしまう。
干渉しあわないようにそれぞれが離れてしっくりくる場所を見つけるなんて
なんかすげぇ深い。



             ココ


コメント

  1. ココ より:

    コメントありがとうございます。
    おばちゃんになるとなかなか頭に入らず・・・(*’▽’)

  2. ( ゚д゚)ウム すげぇな。仕分け作業。でも、楽しそうで何より。

  3. ぽぱい より:

    今年、65才になるので別の仕事を…
    などと思っていましたが、ココさんの記事を読ませて貰って、慣れてる仕事の方がいいかな?って思いました😁
    それにしてもココさんは文章力に長けているので、スラスラと流れるように記事を読む事が出来ます😀

  4. Tani より:

    こんにちは、リンゴ倉庫でのアルバイト、
    新しい職場でのチャレンジは、大変そうですが、楽しそうですね。人と交わってたくましくいろんなことを吸収する、素晴らしいですね。

  5. AKAZUKIN より:

    合わない同志が隣に並ぶとぶつかってしまうって、ほんとそうだなーと・・
    職場にりんごの良い香りがしてそう〜〜

  6. たき子 より:

    社交ダンスなら50代は立派に若手です(*´艸`*)
    ぴっちぴちでよりどりみどりよ!ほぼ爺ちゃんだけど(*´艸`*)

  7. きままなマーシャ より:

    体を動かして人とのコミュニケーションもとって。
    いいですね(*^^*)
    素晴らしい!
    元気も若さも充実しそうです♪
    りんごの香りいいでしょう^^!

  8. スティンガー五郎 より:

    年齢をものともせずいろいろな事にチャレンジしていく姿は素晴らしいと思います。

    今の世の中は超減点主義で、できて当たり前でありできない者は容赦なく減点し、ある一定のしきい値までいったらこれまた容赦なく切り捨てる。
    そして、一度切り捨てられたものには敗者復活のチャンスは二度と与えられないような世の中になりつつあると思っていた矢先・・・・・。

    このような失敗を許し、次へ続かせてくれるような職場があるのはとても勇気づけられました。

    今までの私の会社がそうだったのかもしれませんが、常に右肩上がりで成長を強要されてもねぇ・・・・・って感じです。
    「雇用される」という脅迫状を盾に取られたら、普通の一般的な社会人は何も言い返せませんからね。

    気持ちよく働ける職場。
    本当に羨ましいです。

  9. てんてん より:

    すごいと思いますよ
    僕なんか働こうという気持ちさえおこらない
    しばらくゆっくりしたいと思います。
    そのうち何かやりたいと思うかな~

  10. primex64 より:

    リンゴの並べ方と、人と人との衝突、なるほどの類似性ですね。一を見聞して十を知る。ココさんならではです。流石です。

  11. 今は何でも機械化されているせいで働き口は減りましたね。
    レジはセルフが増えましたしね。
    どこも人員削減してます。
    求人を見ると、自分が出来る仕事の範囲が見えてくるので、落ち込みますよね。

    とりあえず、近くに働き口があって良かったです。
    林檎倉庫のバイトがあってよかったです。
    比較的、休めるのは良い条件です。

    何と60代70代の大先輩が元気で活躍しているのは凄いですね。
    元気な人は元気ですね。

    メモを取るのを文句言われるのは、ちょっとイヤですね。
    「見て、覚えろ!」みたいで、仕事のやり方をまともに教えない職場に多い台詞なんですよね。
    実際は、ちゃんと教えてくれる先輩がいる職場で良かったです。

    人が見た瞬間、真っ先に目に付く場所に美しい林檎を並べるんですね。
    しかもパズルのように綺麗に林檎を納めるんですね。

    ランク分けの選別も、個人の感覚差があるから難しそうですね。
    Aさんは歪んでると思ってもBさんはOKな林檎と思う気もします。
    重さなど数値で、ランク分けしているならカンタンですが・・・。
    生鮮の等級をベテランになると、素早く選別できるんですね。
    感覚的な部分が多くて分かりにくいと思うのに・・・。
    林檎も一軍二軍など序列があるもんですね。

    新人だから色々、ダメ出しされてますね。
    誰でも一年生ですよね…。

    先輩たちにも新人を助けてくれる良い人もいるけど、厳しいし、挨拶もかえさないイヤな人もいますね。
    引越しで色んな人に会った事で、色んな人への免疫があるのはイイ事ですね。

    おねえちゃんと呼ばれると、若返った気分ですね。
    この職場では50代でも若い方なのと新人だけあって、なおさらお姉ちゃんがしっくりきます。
    新人で若造気分味わうのも新鮮ですね。

    林檎も合わないもの同士を隣に並べると良くない点で、人間と同じで面白いです。
    干渉し合わないように、それぞれが離れてしっくりくる場所を見つけて配置するんですね。
    人間でも適度に干渉しあわない距離感が必要なので、同じですね。

  12. Maya より:

    リンゴを適切な距離で並べる作業に共鳴する洞察力と、新しい職場で、自分の距離感を察知する免疫力、ココさんらしい、素敵な強みだと思います。

  13. Nick Ollie より:

    楽しそうな職場だねー。人間観察もリンゴ観察も楽しい。いいのよ、聞きまくって、そこから学ぶのさ~。

  14. 土偶のどっ子 より:

    合わない同士が隣に並ぶとぶつかってしまう。干渉しあわないように、それぞれが離れてしっくりくる場所を見つけるのは、人間もリンゴも同じ。なんて深い❗その通りですよね。リンゴ詰める仕事してて、そんなこと思いつくのは、きっとココさんだけだと思います。すご〜い🤭
    実はうちのグループホームの仕事も、私はどちらかというと若い方に入ります‥。50代で若手に入ってしまう日本の高齢化率、本気でヤバいかもって思ってました‥。
    職種にもよるんだろうけどね。
    でも、若い気分を味わえて、それはそれで悪くないですよね😁

  15. やよい より:

    「お姉ちゃん」または「お姉さん」関西じゃ、街の中でオバサンやおばぁちゃん等女性を呼ぶとき
    そう呼ぶ。
    おばさんに向かって「おねえさん、ハンカチ落としたよ❗」手な具合。

    50代になると仕事の間口が狭くなる。
    40代でアイスクリーム加工の仕事に就いたが、常温、冷凍室と繰り返し不整脈が出て辞めた。
    そして、今の職場で電話番を探していると聞き立候補した。
    電話が鳴らなければ暇。
    だから自分で仕事を探す。
    逃げ恥のドラマでガッキーが初めの方で色々提案してもウザがられると言っていたが、我が職場でも提案しても聞く耳持たずな社員ばかり。

    ココさんの職場は女性ばかりだけど、色んな年代、色んな性格の人が居てやり辛いかも知れませんが
    先ずは慣れですね、
    時間は掛かるけど慣れるまで気長に待ってもらいましょう。
    皆さんも初めはココさんと同じだったと思うよ。
    下手くそマーク(初心者マーク)付けていたら、「しゃぁ〜ないなぁ」となるから。
    ただひとつ言えるのは、言葉足らずにならないように。
    休憩時間におばさん達とコミュニケーション取りましょう。
    ココさんなら大丈夫。
    だって【おねえちゃん】だもん(笑)

  16. 鳥天 より:

    あ~良いなぁ、人間相手の仕事はもう十分やったから、農家のデメンさんとかリンゴちゃん詰めるとかそういう仕事したいな!どちらかというと額に汗かく系が好きなんだよなぁ。ぴ~こもいなくなったから家を空けても怒られないしな、ちょいと心揺れるわ!

  17. 何でもチャレンジ精神がイイネ!
    動けば出会いもありますし、好いことも悪いことも、その、分かれ道を判断するのが自分の意思でもあり人生、いろんな体験ワクワク何でも進み続ける気持ちは、素敵ですね!