ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

いいかげんで寛容なよき時代。

喫煙所をさがす。

なんの為にそんな事をしたのか全然わからない。


あのころの気持ちを思い出そうとしてもただなんとなく以外に説明のしようがない。


ヘビーなスモーカー。




20代で働いていた頃のひとまわり上のおじさん達はみんな不健康で不摂生だった。
煙草は1日1箱以上吸うような人ばかり。


そんな自分も今でこそすっかりやめたが実は当時相当ヘビーな喫煙者だった。
高校生の頃にたまに父の煙草を家の裏のお墓でこっそり吸ったのがすべてのはじまりだ。



百貨店では朝、開店準備が一段落すると上司とイベントで来ていた職人さん達やメーカーのお偉いさんがみな連れ立って煙草を吸いに行く。
総勢何人だというような軍団でおじさんたちが嬉しそうに歩いていく。
おじさんの集団行動はなんとなく可愛いものだった。



携帯も無い時代だったので、売り場でなにか問題が起きると、私たちのような下っ端が店内の喫茶店に上司を呼びに行くのが常だった。

そこはみんな一様にのんびりとした雰囲気で煙草を吸って笑いながらコーヒーを飲んでいた。

みんなで煙草を吸うという同じことをする時間はその後の仕事を円滑にすすめるために一役買っていたように思える。

いまでこそ副流煙の問題で喫煙者が肩身の狭い時代になったが、当時はまだ全然そんなことはなく
「ちょっと一服します?」

そんな言葉があちこちで交わされていた。




当時の喫煙所はよく言えばコミュニケーションの場だった。
そこでなんとなく顔見知りになったり、例えば知らない人でもライターを借りるのをきっかけに言葉を交わすこともあった。

茶店にはどこも灰皿とマッチがあり、どこか行くたびにマッチを集めたりした。
今ではこの話を懐かしがって話す時点で、完全なる化石扱いをされてしまう。


それでも会話をしたりコミュニティに入っていく上では役に立つ部分はあったように思う。



当時、たまに同郷で集まる高校の先輩にはお前には煙草は似合わないからやめろと毎回注意してくれる人もいた。
あの頃の自分はやめる気も必要性も感じていなかったがそんな注意をしてくれるのも優しさだったのだと今なら分かる。

kanahebijiro.com



私は一人で出かける事が多かった。
目的もなく電車に乗ってなんのあてもなく知らない駅で降りては、やみくもにただ歩いた。



歩き疲れるとよく入ったのが喫茶室ルノアールだ。

広い店内。
コーヒー一杯で何時間も居座り、ひたすら考え事をしたり煙草を吸いながら本が読める。
都会で唯一自分が躊躇せず入れる知っている店。憩いの場だった。


当時は至る所に喫茶室ルノアールはあった。
歩き疲れて広い店内に入り席につく。
そこでは誰に気兼ねすることなく安心して時間をつぶすことが出来た。

自分の部屋から電車に乗って移動をして喫茶室 ルノアールで本を読む。

家でも本なんて読めるのだからその移動は大した意味もない事のように思うが、そんな無駄なことこそが暇な自分にとっての贅沢な時間だった。



最近はどこかの喫茶店に入っても長居していいのか店員さんの視線が気になる。
原価の安いもので何時間もいるのがなんとなく気まずい。
そしてたいして食べたくも無いものを追加で頼み、あと何十分か堂々と過ごす権利を手に入れたと思ったりする。


つくづくつまらないことを気にする大人になったものだ。
これもいろんなバイトをしてみて舞台裏を見たせいもあるのだろう。
それにしても色々考えすぎるようになった。


あの頃はそんな事など頭の片隅にもなく、400円もしないようなコーヒー1杯で自分のしたいようにしていた。あの頃の自分がちょっと羨ましくなる。

若さと鈍感力を取り戻したいと思うが、それだけ当時はゆったりとしていて周りが寛容な時代でもあったのだろう。



もう何年も東京には行ってないが、喫茶室ルノアールはまだあるのだろうが。

あの頃のままの雰囲気ではないのだろうなと思いながら、いつか行ってみたい場所のひとつだ。



去年ルノアールで ガラナ [DVD]

期待に背けない・・・?




百貨店を辞めてから働いた職場も、煙草を吸う人だらけだった。



仕事が終わるとそれぞれ電車で帰る前にキヨスクの前で煙草を吸いながらビールを飲む人もいた。
少し前に問題になった若者の立ち飲みと同じことをしていた。
めちゃくちゃ行儀が悪い。


アル中予備軍の大酒飲みばかりだった。


1度私が風邪気味で寒気がして早退することになった時、帰りがけに買ってきたワンカップを渡された。


「今日は帰ったらたくさん布団をきてすぐ寝るように、はい薬のかわり」

言われた通り日本酒を飲んで布団を着て汗びっしょりで寝たら一晩で風邪はうそのように治っていた。



自分の子供には同じような生き方はぜったいにして欲しくないが、私のまわりはこんな頼りになる応援団だらけだった。



その頃、30代後半くらいで糖尿病だと診断されたと噂の人がいた。
無類の酒飲みで煙草は1日2箱くらい吸う、診断されても生活はそのままで不健康のお手本のようだった。



下っ端だった私は午後になるといつも飲み物を全員分買ってくる係だった。

なににしますか?
コーラ
コーラですね。

そして毎回のようにその人に瓶の牛乳を買って戻った。




それでもその人は怒りながら煙草を吸いながら毎回牛乳を飲んでいた。



今考えても意味がわからない。



その人が好きだったわけでもなくどちらかというと苦手で最初はただなんとなくだった。


そして毎回のことなのに注文を聞くとにこりともせずにコーラと答える。
そして毎回私は瓶の牛乳を買って戻った。



途中から言われたとおりに真面目にコーラを買うことが、その人の期待を裏切ることのような気さえしていた。

どんな気持ちで牛乳を飲みながら煙草を吸っていたのだろう・・・
呆れていたのかもしれない・・・





懐かしい事を思い出した。
不摂生なおじさん達。
今頃どうしているだろう。






ココ