ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

雪。冬のコミュニケーション活動。

私の住む雪国。
だいたい12月頃から本格的に雪が降る。
去年は記録的な大雪で雪害と言ってもいいほどの雪で大変だった。
毎年のように忘れずに降る雪。
しんしんと静かに降り続く雪。
朝になるとおそるおそる窓から外を見る毎日。



それが3月の頭、春が来るまで続く。



潜伏期間9か月。

ここ最近、何日か連続で午前中ずっと雪片づけをしていた。
実は、数日間夫が京都に出張に行っていた。
なので自宅警備員として駐車場などの雪片づけの責任を一手に担う事になっていたのだ。


今年の春引っ越しをしてきたばかりの我が家。
ゴミ捨てなどですれ違う人に挨拶はしていたが、道を挟んだ向かい側の住宅にどんな人が住んでいるかコロナ禍もあって知る機会もなかった。


毎晩、朝までどのくらい積もるか気になった。
朝起きて、弁当を作り娘を送り出した後。
本格的な雪かきがスタートする。

手袋をはめて、長靴を履いて完全防備で外に出る。

毎年そうなのだが、12月からだいたい2月くらいまでの3か月。
それ以外の9か月間自宅に潜伏していた人々が根雪と共にそれぞれの家の玄関先に出没する。

この時期だけは雪かきというノルマによっていやおうなしに家から出ざるを得なくなるのだ。

「おはようございます。」
「ほんとにいやんなっちゃいますよね。」


毎年。
毎日。
何年も。

雪国定番の同じフレーズを交わしながら、言葉とは裏腹に笑顔であんがい嫌な顔をしていない。

その地域の共通の雪捨て場に、スノーダンプを押しながら自宅の雪を捨てるために運び行き交う。
いつのまにかついた一方通行の道をお互いの邪魔にならないように気を遣いながらすれ違う。


間違っても向こうから戻ってくるのと、捨てに行くのが鉢合わせないようにタイミングを考えて、
数秒ずらして行ったり来たりする。
その様子は、なにか一定の同じリズムを刻んで動いているようだ。


そして、これも毎年思うのが雪かきに関してはさすが人生の大先輩たちは上手い。
どう頑張っても年配の方にはかなわない。


スノーダンプを押しながら歩く姿は堂に入ってるというか、動きにムダがなく
私など足元にも及ばない。
20代の頃なんて雪の捨て方を何回、そのころ住んでいた地域の近所の長老に注意されたか分からない。

雪の番人みたいなじいさんも各地域にいた。

春は鳥が早朝から大合唱だった近くの木。



雪が音を吸収するので、静かな住宅街。
たまにすれ違うたびに

「疲れたねー」
「今晩筋肉痛かな」


そんな言葉を笑いながら交わしていると、9か月の潜伏期間が嘘のよう。
だんだん何年も前からの知り合いのような気分になってくる。




いいこともある雪かき。

2日目。

あと数週間もすれば終わりのない作業に絶対にうんざりしてくるのだけれど
まだ今年の雪かき二回目と言うこともあり、ちょっと楽しみな気持ちで外に出た。

なぜ楽しみなのかと言うとちょっと理由もあった。
前日、午前中いっぱい雪かきをしてスマートウォッチを見ると9000歩近く歩いていた。
心拍数を基にして出る運動スコアのPAIという数値も81と好成績だった。
雪かきはけっこうな全身運動なのか、終わると汗びっしょりになって家の中にいてもしばらくストーブもいらないほど体が温まるので節約にもなる。


これは家に居ながらにして運動になるのだから一石二鳥。

今日の歩数を昨日より多く、PAIの数値も上げたい。
目指せPAI100!
単純なので目標ができると楽しくなって雪かきをスタートさせた。

子供の頃のようなワクワクする狭い雪道。



前日の晩けっこう降ったようで、夫の車が埋まらないように
夫の駐車場の雪も片づけに行った。




「マスクしてなくてごめーん」

「いえいえ私もなんでぜんぜんいいです」

ネックウォーマーをずり上げて後ろを振り返った。

「じゃ少し離れて話せばだいじょうぶかな。ちょっといい?」

なんだか初対面じゃないかのようなフレンドリーな女の人。
60代くらいで夫の車が置いてある場所の道を挟んで向かいの家に住んでいる人だった。

明るく話しかけられたが、内容はなんだか困ったはなしだった。


私の住む側の集合住宅の住人の男性に、朝からものすごい勢いで怒鳴られたようだった。

その地域の人が昔から捨てる雪捨て場はこちら側にある。
公共の場所。
何年もずっと揉めることなどなかったのに、その男性は向かい側の人が建物内を少しだけ通ることが腹が立ってしょうがないらしい。

そして他人に怒鳴ったその男性の駐車場は、何日も放置した雪で車が埋まり隣との段差が出来ていた。
充分他人に迷惑をかけているが自分の姿はきっと自分には見えないのだろう。


日中はほとんどの人が仕事に行くこの建物。

むしろ地域の人が雪捨て場を整えて、後から捨てやすくしてくれているありがたい事なのに。

「絶対ここを通るな、勝手に捨てるな、捨てるなら迂回しろ」
理不尽なことをはじめて言われて萎えていたようだった。


聞くと少なくても20年以上前から一度も揉めることなく、
怒っているのは最近越してきたその人だけらしい。

なんだか怖くなって、なので私にまで気を遣って、
通らせてもらいますねと伝えに来たようだった。


いざとなったら管理しているところに間に入ってくれるように話してみるが、
いろんな人がいるし、しばらく様子を見ましょうと言いその日は別れた。

雪はこれからで先はまだまだ長い。
あまり気にせずにお互い頑張りましょうと少し世間話をしたが
その女の人は話してみるとなかなかに面白い人だった。

久しぶりにマスクなしで人と話した気がしたが、
「でも雪がきっかけで話をしたのもなにかの縁だよね」
そんな事を言っていた。





雪かきは数日続き無事夫は出張から帰ってきた。





雪はコミュニケーション。

いつも思うのだが、他人の行動が気になって仕方がない人はどこにでもいる。
自分の感情が抑えきれずに、腹が立ったことを直接言わないとスッキリしないのだろう。


許せない気持ちばかりで生活するのはきっと毎日しんどい。


生きていれば自分だっていつ人に迷惑をかけることになるか分からない。
きっと色々な人に迷惑をかけているしこれからもかけるに違いない。


そう考えるとお互い様なのに。


最近公園で遊ぶ子供たちの声がうるさいという苦情で、公園を閉鎖したという残念な話もネットで見た。


なんでなんだろう?
カルシウムが足りないのか・・



そんな事を考えながらふとTwitterを見ていたら、なるほどと思う言葉が目に飛び込んできた。


たまに

お寺の掲示板に貼ってある、筆で書かれたありがたい言葉に不意に心を打たれて
「なんてタイムリーな言葉。なるほど」
そう思うこともあるがそれに似ていた。








ヒマだと人はろくな考えにならない。
自分を見ていてもそうだ。
ヒマだからなんだかむかつくことばかり自分から探している時がある。

いかんいかん。
Twitterよ教えてくれてありがとう。

世知辛い世の中。
せめて笑って人と交流したい。




果たして今年の雪はどのくらい降るのだろう?


適度な雪は運動不足解消で
冬の大切な人とのコミュニケーションで
そして雪が降るから
春のしあわせが何倍にもなるのだ。

今年はぐうたらしないで一生懸命雪かきをしよう。
                    

                       ココ