年が明けた1月2日。
岩手の浄土ヶ浜に家族5人で一泊旅行した。
その道中、少しだけ道に迷った。
夫の車はマニュアル車で何年もマニュアルは運転してない私も、オートマ免許の娘も運転ができないので、途中で運転を交替できるように私の車で行った。
ボロい中古車なのでナビも三陸復興道路ができる前の古いもので、使いものにならない。
スマホのナビで行こうと言ってもこういう時の夫はいつも変な意地と自信を発揮する。
「ナビなんかいらない。何回も通った事あるから分かってる。」
ならばそうしようと出発した。
絶好のドライブ日和。
狭い車内に久しぶりの家族5人。
順調に走り出した。



途中岩手県の沿岸部を中心に設置されているポケモンマンホール「ポケふた」を見るために何か所かの道の駅に降り立った。
ポケモンが地域と手を組んで日本中の様々な場所に設置したポケふた。
道の駅や、駅に設置されたふたを探しに回るのはなかなか楽しかった。




最初に降り立った地点での事。
復興道路に戻ろうとしても、どうしても入り口にたどり着けずに何度も同じ道を通る。
夫は完全に迷っているのだが
方向としては合ってるはず、とか
新しくできたのかな、とか
独り言を言いながらも、ナビを使ったら負けだと思っているのだろう。
子供達も狭い車内でいつもの事と笑っている。
別に急ぐわけでもないので車窓から三陸の海沿いの景色を見ていた。
その途中、何度も同じゆるキャラの前を通った。
「あれ?さっきもこの子の前、通ったよね?記念に写真撮っておこう」
同じ道に出て、可愛いゆるキャラが現れるたびに焦る夫。
迷ったおかげで様々な景色を見ることが出来た。
海沿いのコンクリートの防波堤や防潮堤。
ここが12年前は大変な状況だったとは信じられないくらい綺麗に整備された灰色の壁。
悲しかった震災の記憶は決して忘れてはならない事なのだと、海沿いを走りながら
実際の場所を見て感じることが出来た。
記憶力。
数時間後、ホテルの部屋に落ち着いた。
ゆっくりおやつを食べながら
道中、何回も見たゆるキャラがどんな形でどんな顔だったか覚えているか?という話になる。
それぞれが記憶をたどって書いてみることにした。






今回は息子が一番記憶力が良かった。
夫は運転していたのだから、覚えていないのも無理はない。
長女も今回はあまり覚えていなかった。
私はけっこういい線言っているとちょっと思った。
そしてなんといっても今回の画伯は次女だった。
どの部分が一番記憶に残ったのかがそれぞれ面白かった。
そういえば息子は小さい頃からやけにこういう時の記憶力が良かった。
助手席に乗っていても、よく道路から見える看板の模様などを事細かに記憶していた。
手を上げているところや帽子をかぶっている所まで記憶しているのはすごいと、小さい頃の事を思いだした。
覚えておきたいもの。
ひとの記憶とはなかなか思い通りにはならない。
覚えておかなければならないものに限ってどんどん忘れていき、
忘れたいことの方がなかなか頭から離れないのはなぜだろう。
次の朝。
夜が明ける前に起きて夫と二人、浄土ヶ浜を散歩した。
海は美しくて、たくさんの鳥たちが鳴いていた。
美しいこの景色が10年後も変わらずにいてくれるだろうか。
そして、となりにいるこの人は10年後もナビを使わない意地っぱりなままだろうか。
この瞬間を歳を重ねても忘れずにいることが出来るだろうか。
きっと数年後、記憶の中で道に迷ったことが今回の旅の一番の思い出になるだろう。
小さな旅の記憶が子供たちの中にいつまでも残って欲しいと思った。
ココ