ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

車中泊の次の日分かる布団のすばらしさ。

おふとぅんさいこう。

日々の生活。
毎日のようにどっちにするかの選択の繰り返しだ。
右に行くか左に行くか?

その都度どちらにするか選びながら進む。


選んだ瞬間にこれは間違っているのではないかと
感じる胸騒ぎ。


たいてい当たる。

億劫だった外出。


最近、コロナ疲れか、なんとなく心が疲弊していた。
家から出るのがやばいくらい億劫だった。

東北なので、それほどの猛暑でもなくお出かけ日和が続いていたのに。
もったいないのは分かっていた。



子どもが3人が家にいた頃の夏休みは、どうやって楽しませようかと毎日忙しく計画していた。
今、家にはは女子高生になった次女のみなので、そもそも親とは行動しない。


今年は単位がやばいのか、息子も帰省せず、予定と言えば、お盆に夫の実家に行くらいだ。

最近のコロナは軽症の場合も多いとはいえ、かからないに越したことはない。
我が家に限らず、何の仕事でもそうだとは思うが、夫の仕事はわりと感染が望ましくない職業のため、まだ少し人混みには慎重だった。

次女は夏祭りも兼ねて、前に住んでいた土地の友達の家に電車で泊まりに行った。
一泊だというのに、浴衣だ着替えだと大荷物で出発した。
心配だが家に閉じ込めておけるわけでもなく、気を付けてと見送った。

なんだかコロナのストレスなのか、色々と考えるのも面倒だ。


夫にどこか出かけようかと言われても、正直まったく気が乗らない。
今年は夏祭りも目白押し。
どれもコロナ禍ぶりの開催で素晴らしいはず。
なのに、今じゃない気がしていた。

それでもしつこく夫がどこかに行こうと誘うのは、おそらくわたしが、最近いつもと比べてあまり喋らなくなったからなのだ。



普段、夫はほとんど話さない人なので、私が黙ると家の中が静まり返る。

普段は生返事を返したり返さなかったりな癖に
やはり妻があまりに静かなのは気味が悪いようだ。


重い腰を上げて。

色々なブログを見て車中泊がやってみたかったのを思い出した。

人との接触を避ければいいし予約もいらない。

道の駅などに泊まって車で寝るという非現実的な事をしてみたかった。

小さい子供連れではないし、大人二人なのでどうにでもなりそうだ。

そのことを言うとやっと私が出かける事に前向きになったからか
夫がやる気を出して早速ホームセンターに道具を買いに行った。

たぶんこんなに急ごしらえで用意して出かける人はあまりいないだろう。
Amazonを調べることなく、最安値や口コミを見ることなく、夫がサクッと決めて買い揃えた。
内心とんでもない予定外の出費だ、チェッ!と思ったが、この勢いのほうが挑戦できそうな気がした。

あまり快適じゃなくてもどうせはじめてだ。
次回から何を改善すればいいかの為にチャンスだし、実験として一回泊まってみよう。

そんな感じで車中泊用のマットを買って、タオルケットやら家にあるカップやらを適当に積んで午後になってから出発した。

夫に行き先は任せた。

途中、コロナ禍になって初の夏祭りに寄った。

久しぶりの祭りを見た後、食料を調達してネットで見た道の駅を目指す。

家でうだうだしていた時からは、全然信じられないほど行動的だった。
そして、行きたくないと引きこもっていた午前が、まるで昨日の事のような感じがした。

しばらく車で走ると海の匂いがしてきた。

左手に夜の海を見ながら走る。

右手は山になっていて道の駅はそちらにあった。
まつり期間中にしては混んでいない穴場。

向かい側左手の海側にもかなりの台数が停めれる駐車場がある。
海が目の前なのだが人がいなすぎるし道の駅から少し離れていた。
信じられないくらいがら空き状態。

ここで選択の機会がきた。

夫は迷わず海側に入る。

私「人がいなすぎるからやめよう」

夫「いないほうが気楽じゃない?」

「いやいやいや真っ暗で怖いから」

「いやいやいや大丈夫だって」

「道の駅があるほうが、トイレとか色々便利だし安心だって」

「いや海の音が聞こえるところで寝れば気持ちいいって」

「なんか嫌な予感がする。怖いからやだ」

「大丈夫だってば」

やけに今回の夫は負けなかった。
そして私はいつもより、早めになんかどうでも良くなった。
寝るだけだからいいか。せっかく準備してくれたし素直に従おう。

そしてこの選択がまさかあんな夜になるとは。

前半最高。後半恐怖。

車を海の目の前。駐車場のはじに停め寝床の支度をした。

マットを敷いて車内が見えないように布を窓に挟んでカーテンの代わりにした。
貸し切り状態の駐車場で遅い夜ごはんにした。

遅かったので、食事は買ってきたつまみや弁当だったが外で食べるのは美味しい。

波の音を聞きながら、上を見るとものすごい星空だった。
涼しい風が海から吹いてきて、月も綺麗で近い。

確かに人がいないのは気楽だと思った。

山手の道の駅のトイレまで行き、寝る支度をした。道の駅には車中泊の車が何台もいた。人のいない離れた海手に戻り横になる。
最初は、車で寝る事に興奮して眠れなかったがしばらくして移動の疲れからか眠りについた。

なにか真っ暗な海なのに、やけに眩しいような気がして目が覚めた。

半分眠っていた私の脳が一瞬で覚醒するような嫌な感じがした。

やけに大声で電話で話す声がしていて外にライトを思いっきり照らした外車と、いかにもな輩がぞろぞろいた。

そして普段あまり聞かない内容が耳に飛び込んできた。
電話をして話している男。

エメラルド、5億円、あいつをぶっとばす、女、現地調達、まじぶっ殺す・・・
言葉にまったく訛りはなかった。
出てくるワードが物騒すぎて恐怖で歯が一気にカチカチする震える怖さ。

まじかー
なにこのじょうきょう。

おまけに何をしているのか金属バットか鉄パイプを転がすようなカランカランという音がしている。



耳を澄ませて聞いた感じでは、
電話をしている先輩の男がリーダーで
後輩の男が数名で
偉いのか敬語を使われているおじさんが一人いて
女が一人。

こんな感じだった。

そしてたぶん電話の向こうがボス?

こんな騒ぎの中信じられないくらいのいびきで爆睡している夫の耳に口を付けて

「起きろ!」

言いながらびっくりしてむくッと起き上がろうとした体を抑えつけた。

「起き上がるな!」

目が3になっているのび太のように、寝ぼけた顔の夫に状況を説明した。

私の頭の中は、
あぶない刑事の横浜の埠頭で闇取引の現場に居合わせてしまい
口封じで消されてしまう。
みたいな状況になったらどうしよう。
そんな妄想でいっぱいだった。

想像では、辰吉丈一郎似の先輩の男が後輩の手際の悪さを大声で叱っていた。
そして音楽をかけろと言い、次の瞬間ものすごい大音量が流れた。

久保田利伸のララララブソング
今も変わらぬ名曲。

久保田は好きだけど今は聞きたくない・・・

時計は0時30分。私達は、たぶん30分くらいしか寝てなかったようだ。
このまま長い夜になるのだろうか?

宴が始まった。

偉いおじさんが、若いお姉ちゃんに星座を解説し始めた。

「わかる?あれがほくとななせいでねー」

夫がひそひそ声で言う。
「ねえ北斗七星をななせいって言ってるよ」

こういう時にそこを気が付いて笑う夫が信じられなかった。
今はそれどころではないではないか。

その場から逃げたかったがものすごく位置が悪い。
まずい事に完全に車が囲まれている。
なんで、はじっこに向こうを向いて停めたのか。
ここからどうやって逃げればいいのか?
大音量の久保田利伸を聞きながら朝まで寝る自信がない。

そんな状況で数分経った。

もう一台の車が来た。
現地調達
電話でそんなことを言っていた女たちがやってきたらしい。
こいつらは浮足立っている・・・?
今がチャンスかもしれない。
夫に聞いた。

「このどさくさに紛れて静かに車をバックのまま駐車場の反対のはじに移動できる?本格的に宴会が始まってこいつらが酔っぱらうとたぶんもう逃げれない」

「やってみるか?」

「すごい長いバックだけど後ろ見える?大丈夫?」

「余裕」

夫が静かにエンジンをかけた。

静かにかけても、当然だがエンジン音は普通だった。

エンジン音に気が付いたのか、お前達そこにいたのか?という視線を感じた。


どうぞ皆さまごゆっくり

できるだけ平和に見えるそんな顔をして目を合わせないように横に乗っていた。
でも手にすぐ電話できるように、交番にかけれる準備をしたスマホを持って。

長い長いバックだった。
なんとか無事に脱出して広い駐車場の反対のはじに移動した。
心強い事に、もう一台だけ車中泊がいたので近くに停めた。

途中でからまれなくてよかったと、ホッとした。 夫は再び秒で眠りについた。
私は寝たのか寝てないのか分からない感じで朝になった。

馬鹿騒ぎは明け方まで続いた。

たぶん単なる騒ぎたいマナー違反なグループだったのだろう。
それにしても怖かった。

初めての車中泊は、こういう場所はだめという勉強になった。
うちの夫はいくら話したところで聞いちゃいないから、このくらいの経験を、実際に最初に経験してよかったのかもしれない。

今までいろんな場面で夫の選択は毎回危険がはらんでいる事が多かった。

そして、

「こういう事があるから思い出に残るじゃん。」

と毎回まったく凝りない。

あの時こっちを選んだばっかりにが多い。

それでもこんな日常とかけ離れたピンチのおかげか
なにかどんよりしていた心が
軽くなったような気もする。

大ピンチからの脱出なんて
そうそう経験できるものではないかもしれない。

夏の思い出になった。

                  ココ