出会い

雪国のあたたかいふつうの暮らし。

出会い


今年は雪が多い。


毎年のことだから慣れてはいるのだが、ただでさえ外出が制限されるコロナ禍に窓の外で白い雪がひたすら落ち続けるのを少し憂鬱な気持ちで眺めた。

近所の人と顔を合わせるたびに
「もう雪はうんざりですね」
これが挨拶がわりで一日に何回も雪かきをする。



雪道を散歩する。

歩道は1人通れるかどうかの幅になっていて向こうから人が来ると、すれ違うのも大変なので少しこちらで待ったりする。いかにも待っている感じだと気を遣わせるのでスマホを眺めたりする。

それでも譲ってもらった側が「お先にすみませんね~」と一声かける。
男子高校生が恥ずかしそうに「うっす」と頭をさげてくれたりするのも可愛い。

たまにすれ違うのにお互いが気を使いすぎて同じ方向によけ、それが何回も同じタイミングで同じほうによけるのが続く事がある。
そういう時の相手はなんとなく似たもの同士なのだろう。

おばちゃん同士は気遣いしあった後でまるで知り合いかのように

「やだー」

ポンっと肩を叩いて一瞬笑いあう。



雪国で車を運転していると優しい人が多い。


轍にはまって車がスタックして途方にくれている人がいるとどこからともなく人が集まってくる。

別に助けてくれと言われた訳でもないのに

「大丈夫ですか?押しますよ」

そう言って集まり、知らない同士何人もが協力しあって車を押す。
そして何事もなかったかのように一斉にいなくなる。


今年も車を押した。

吹雪の中。
見ると家の前で大きめの車が轍にはまって困っていた。車輪が空回りして全く前にも後ろにも進めない状態だった。

お手上げだったので、こたつでぐうたらしていた夫を呼びに行く。


夫はトムとジェリーのトムのようにクッションを抱いて半目でうつらうつらして眠っていた。

車のことを説明するとすぐに飛び起きてジャンバーを着た。

急いでダンボールを探しスコップを持って向かう。

慣れた様子で後ろタイヤの周りを掘ってダンボールをかませ、テキパキと指示を出した。

何回かで脱出出来そうな時、

「お礼言わなくていいからそのまま絶対に止まらずに行っちゃってねー」

運転手さんは車内で頭を何度もさげながら走り去った。達成感。

これは別に夫が特別な訳ではなくてこういう場面は雪国では日常茶飯事だ。


私も若い頃何回も見知らぬ人に助けられた。
はじめて助けられた時は本当に感動した。


こんな時たいてい本人はテンパっている。

そこでテキパキ指示する人は3割増位でかっこよく見えるものだ。


夫よ、凄いじゃん…


感心しながらダンボールを片付け部屋に戻ると 、夫は完全にトムに戻ってまた半目にクッションでぐうたらしていた。

もはや凶器(; ・`д・´)


雪の思い出



幼い頃も雪は多かった。

今年のようにいつになったら雪がやむのか不安になるほど何日も続く事もあった。

ボロい家が吹雪でガタガタ揺れる中
母はいつもストーブの前で編み物をしていた。
ストーブの上に乗ったやかんで煮立ったお湯がこぼれ、音をたてて水蒸気になるのを眺めながら静かに時間がすぎた。


何日も何日も降り続きようやく晴れた日。

ワクワクしながら誰の足跡もついていない庭に出て 私の膝より上まで積もった雪に自分の足跡をつけながら歩く。

そんな時になにかの動物の足跡を見つけると

私が温かい部屋で母と過ごしていた頃この動物はあんなに吹雪の中1人で歩いて寂しくなかっただろうか


そんなことを思ったりした。




散歩中、道路の脇に小さなかまくらを見つけた。


今年は雪が多く冬が長い。


でもこんなにたくさんの雪も必ず溶けて春になる。


大変な事も多い雪国だけど、人の優しさに触れるきっかけを作ってくれるこの雪を、あともう少し楽しもうと思う。



ココ




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