息が苦しくなりながら一気に本を読んだ。
大人っぽいこども。
子供っぽいおとな。
秒で買った。
読み終わってしばらく胸がむかむかした。
気持ちが悪かった。
重い親への感情。
どうしようもなく不器用な親。
外のすがすがしい空気を吸って深呼吸したかった。
そっと隠していた自分の内側にあるものに無理やり向き合わされたような不快な感情。
失敗した。こんな本、読まなければよかったと後悔する気持ちと
こんなにも気持ちの底をえぐられるような本を今すぐもう一回読みたいという矛盾した感情が沸いた。
本を読んでこんな気持ちはひさしぶりな気がする。
宇佐見りんの くるまの娘。
まだたったの23歳。
「推し、燃ゆ」で大学生の時に芥川賞を受賞している。
実は芥川賞をとった
「推し、燃ゆ」
以前図書館で借りたのだが、自分には合わずに読まずに返却していた。
なにか文章が頭にすんなり入ってこない感じがした。
あまり面白いとは思えず、正直好きではなかった。
私は本は好きで読むのもわりと早いのだが、読めない時は全くダメだ。
とりあえず読んでみようとか頑張って読了出来ない。
完全に斜め読みで行ったり来たりを繰り返した末、降参して読まずに返した。
この人の本は合わないのかと思っていたのにどうしたことか今回はわざわざ買ってまで読んだ。
最近では本を徹底的に断捨離した。もっぱら本は図書館で借りるか、昔の本は青空文庫などの無料電子書籍でよんでいるのにどうしたことか買ってしまった。
雑踏の中の読書。
家事が一段落したあと読み始めた。
なんだか落ち着かない気持ちになった。
この本は外で読みたいと思った。
食卓だったり、揺れる洗濯物だったりの生活の気配のしない場所。
自分がきちんと整えた穏やかな部屋で読みたくなかった。
色々な人の行き交うざわざわした場所で読みたいと思い本を持って駅に行った。
私の家の窓からは駅が見える。
駅前のビジネスホテルの看板がすぐそこに見える駅裏に住んでいる。
ときおり風に乗って駅に到着した電車の音が聞こえる距離。
小雨がぱらつく中、傘をさして駅まで歩いた。
駅構内には勉強したり休んだりできるフリースペースがある。
今日は雨だったからか勉強してる人はいなかった。
テーブルに突っ伏して寝ている人がいた。
線路が見えるはじっこの椅子に座って改めてこの本を読みはじめた。
いびつな親子関係の5人家族。
それぞれの心に痛みと狂気を抱えている。
それぞれが自分の中にある過去のトラウマや心の傷に苦しんでいる。
なにげない家族で過ごす生活の営み。
笑顔で軽口を叩きながら娘らしさを演じている主人公。
大好きだったのに昔とは違ってしまった母。
普段は穏やかなのに闇を抱え、時折爆発して言葉で家族を傷つける父。
そんな家から逃げる兄と弟。
本の中の母は一生懸命やってきた事が報われなかった寂しさを抱えている。
読み進めるのが辛いほど空回りしていて醜い。
主人公の娘は過去に自分が放った言葉で家族を傷つけていた。
自分の記憶から綺麗に消し去られていたことに気が付いて愕然とする。
人は自分が受けた傷は決して忘れないが、傷を与える側になっていた事を覚えてさえいない。
なにか読んでいて苦しかった。
そして私だって忘れているだけで傷を与える加害者だった事もあるかもしれないと思った。
この母も娘も父も、
兄も弟も
すべて自分に当てはまる気がした。
一気に読んだ。
薄暗い家族という存在。
雨まじりの生あたたかい人いきれの駅。
雑踏の中ぐるぐるする気持ちを抱えて歩いた。
駅を出るとまだ少し雨が降っていたが傘を開くのがめんどうで濡れながら歩いた。
なにもかもから目を背けたくなる家族という存在。
逃げればいいのだ。
弱い親を捨てて自分の人生をきちんと生きればいい。
それでも心から消せないのは家族だからだろう。
凄い本だった
と
嫌な本だった
今、自分の中に2つの感想が同時にある。
娘としての親に対しての違和感。
親としての孤独。
色々なことを考えながら歩いた。
ココ