私について

かっこつけても結局私はいつもオチ。

私について

人に舐められる事が多い。
べつに尊敬される程のじんぶつではない。
でも、
それにしてもと思うことがたまにある。

デビュー初日から。



高校を卒業して上京し寮生活のスタート。
皆、社会人デビューしようとかっこつけるのに必死だ。
上京の日は会社から指定されていた。

横浜市営地下鉄のとある駅。
田舎者が人事課の人と駅に雁首を並べていた。

自動改札の使い方の指導がはじまった。

「素早く通って下さいね」

筋金入りの田舎ものが40人ほど、吸い込まれる切符に焦り
キャーキャー騒ぎながら心臓バクバクで改札を通った。

今想像するだけで恥ずかしい。

夜になり、田舎から今日上京して来た新入生が寮の食堂に集めらる。


先輩や寮の管理人さんから言われる心構えを神妙な面持ちで聞く。
食事の配膳方法を聞いた。

朝の食パンは二枚までとか、順番を守れとかいう説明だ。
たどたどしい手つきで夕飯のおかずをお盆に乗せて自分の席に戻った。

田舎からきたばかりの娘達は、ケミカルジーンズ率高め。
寮で履くズボンは黒いジョッパー率高めだった。
キメキメファッションのつもりでいる。

そしてどの顔も緊張の面持ちで聞いている。

私は最初から気になっている事があった。

私の座る端っこのテーブルのちょうど対角線上の端っこにいる女。
まぶたが真っ青なアイメーク。
プールから上がったかのような紫の口紅。
派手な女がこっちを見ている・・・

始まった時から目が合っていた。
バッキバキに目が合う。
ガンを飛ばしてきていた。


「こいつは敵なのか?」


デビューしたての田舎もんが目でけん制しあっていた。


1人ずつ自己紹介をしてくださいと言われた。
出身県と好きなテレビと好きな食べ物。
なんてことはないよくある自己紹介だ。


端にいた例の女はトップバッターだった。
少し緊張の面持ちで無難に当たり障りのない自己紹介をした。


皆、緊張からかびっくりするくらい1人目と同じことを言う。


私もクレープが好きです。

この世に食べ物がクレープしかないかのようだった。



私の番が来た。

気の利いたなにか違う事を言う気満々で、その女をギラギラ見ながら立ち上がった。
なんて言おうかな…
ウケ狙いばかり考えながら急いで立ちあがった。

椅子が私の立つ早さについていけなかったのか思いっきり体が斜めによろけ
目の前の味噌汁に手がはいってテーブルが一気に大惨事になった。

椅子から立ち上がるという当たり前のことで急に転んだ私を見てみんなが息をのんだ。


ありがたいことに、そこら辺のテーブルから一斉にティッシュやふきんが飛んでくる。
見るとあの女も笑っていた。
みんな優しかった。



「えっとサザエさんとホヤが好きです。」

なんかグダグダで微妙な感じに自己紹介は終わったが、そのあとあの女とは普通に仲良くなった。


あの時殺し屋のような目でガンを飛ばし合ったのに。
第一印象が悪い相手ほど仲良くなったりする。

なんでわたしだけ?



舐められるのは思い返すと人間だけではなかった。

高校生の時。
夜中に家を抜け出して友達の家に集まった。
農機具の置かれた物置の二階のたまり場で騒ぎ帰る明け方。

そこで飼われている老犬。
いつも私にだけ異様に吠えてくる。
誰にも興味なさげに前足にあごをのせて、人が通ってもチラ見するだけの犬なのに。
私にだけは喉が枯れるほど吠えるのだ。



他にもある。
子供が小さい頃、家族で牧場に遊びに行った。
ポニーの散歩体験。
可愛い小型ポニーで大きい犬くらいのサイズ。
頭に赤いリボンがついていた。
太いリードを持ってのんびり牧場を散歩した。
長女、長男と順番にリードを持って歩いた。
次女はまだ小さいので夫と二人で持った。
次は兄妹3人でリードを持つ。


パカパカとゆっくり歩くポニー
ゆっくり時間が流れていた。

のどかな時間だった。

「お母さんも持ってみたら…」
「お母さんはいいよ」
「えー楽しいし簡単だよ」
「いいよ、終わっちゃうから。」
「大丈夫だよこの子おとなしいし。やってみて。」


子供達に勧められしぶしぶ交代することになった。
なんだか嫌な予感がするのだ。
私にリードが渡された瞬間にポニーが急に大きなため息のような呼吸をひとつした。

「え?なに今の?」

びっくりした瞬間。
ポニーが急に暴走した。
もうたまらないという感じで焦っている。
さっきまでポニーはずっと前を向いてのんびりと歩いていたのに。

きっと背後の会話を聞いて、リードを持つのが私に変わったと察したのだろう。
私が持った瞬間の大きな嫌そうなため息。



なんでなんで?

夫が全力でリードをひいて助けてくれた。



ずっと私はこうだった。


人に舐められる。
動物にも。


でも緊張されるよりは、舐められるくらいがいいのかもしれない。

そんな感じが自分には合っていると、この頃は思う。



ココ

コメント

  1. ココ より:

    Nick Ollieさん
    若いときってなんであんなに頑張って自分をよく見せようとしていたんだろうって
    思いますよね( ´∀` )
    田舎もんなんで舐められないように必死でした笑

  2. Nick Ollie より:

    若い頃は何だか初めてのことにはすごい緊張したり、初めての相手に妙に尖って対応してみたり、だったなー。青かったなー。という自分を思い出した。
    今やすっかり丸くなりました。

  3. ココ より:

    akazukinさん
    本当にいつもかっこつけてもこういうオチになりがちです。
    かっこわる(*´з`)ってなるんですよねー。

  4. ココ より:

    やよいさん
    笑ってもらって嬉しい(*´з`)
    本当にさ、なんでだろぉだよね(^^♪

  5. ココ より:

    鳥天さん
    本当にそうだね。
    ヘビーな戦いはもういらないしな(*´з`)
    ポニーもだし、カラスもだしいっつも
    負けちゃう💦

  6. ココ より:

    ティンガー五郎さん
    そうなんですよね。
    若い頃は自意識過剰すぎたんですよね(*´з`)
    誰も気にしちゃーいないのに。

  7. ココ より:

    ひでぴんさん
    なるほどそうかー。
    動物って分かるんでしょうね。
    納得です(*´з`)

  8. ココ より:

    JUNさん
    やっぱりそうなのかな( ゚Д゚)💦

  9. ココ より:

    ジーミル・アスポンさん
    今絶対に馬には乗らないようにしようって思いましたヨ💦
    春先はカラスに挟み撃ちにされかけました。
    怖かったです( ;∀;)

  10. 社会人を寮生活でスタートされるとは大変ですね。
    仕事も生活も両方新しいから…

    でも田舎からの上京組・・・皆、必死感あります。
    むりくりキメキメファッションなところが、
    後から振り返ると痛いところありますね。
    必死で田舎もんだと思われないようにしていたっぽいです。

    クレープが好きです・・・と一人目が言った事をつい、
    緊張で言葉が思い浮かばないので、皆が模倣してますね。

    でも、何の自己紹介しようか考え過ぎて、
    よろけて味噌汁をぶちまけるなんて…(^^;
    皆の緊急感をときほぐして場の雰囲気はよくなったでしょう。

    動物に舐められるのですね。
    不思議ですね。
    緊張されるよりいいのかもしれないですけど…(゜.゜)
    でも危なかったですね。

    猫とか小型犬とか小動物ならいいけど、馬だと
    危ないですよね。
    落馬したら大変…

  11. JUN より:

    何かのオーラが出てるのね 💦

  12. ひでぴん より:

    今回も楽しく拝読させてもらいました!
    馬は人な心が読めるらしいですよ😅
    何か嫌な予感…を裏読みしたのかも知れませんね💦

  13. スティンガー五郎 より:

    新しい出会いの場って、必ず第一印象がめちゃくちゃ悪い人っていますよね。
    でも大抵、その子とはかなり仲良くなったりしますもんね。

    私の人生も舐められっぱなしだったような気がします。
    虚勢を張ってハリネズミみたいに尖ってた頃もありましたが、やっぱり疲れちゃうんですよね。
    いつの頃からか、「もう勝手にしやがれ!」って開き直ったら、結構ラクになりました。

    自意識過剰で、自分が思うほど人って自分のことなんて見てなかったり気にしてなかったりですからね。

  14. 鳥天 より:

    舐められているのかもしれないけれど、舐められても気づかない無神経さがあると人生イージーモードかも。ポニーには負けない!

  15. やよい より:

    ごめんなさい。
    笑ってしまったww

    そうそう、自己紹介って内容は違っても1番目に自己紹介した人の項目通りに進むのは
    なんでだろぉ~♪なんでだろぉ~♪
    初対面で、めっちゃ「この人嫌い!」という印象の人とめっちゃ仲良くなってしまうの
    なんでだろぉ~♪なんでだろぉ~♪

  16. AKAZUKIN より:

    「殺し屋のような目で…」笑
    ハプニングがちょうどみんなの緊張をとくキッカケになったのかもしれないですねー。