ウリ坊というのはイノシシとぶたのハーフだと大人になるまで思っていた。
そういえばウリ坊の絵や写真はいつもミニサイズのイノシシだなと思っていた。
あれはイノシシの子供時代だからだと23歳の時はじめて聞いた。
でもすぐには信じられなかった。
快適な我が家。
今年の三月に引っ越しをしたのだが、今の物件は過去一番に都会だ。
でもこの場合の都会とは我が家の娘にとっての都会であって、実際はそんなでもない。
JRの駅が家の窓から見えて、ヨーカドーやミスドやユニクロが徒歩圏内にあり、学校の帰り道が割と明るい。
そしてなによりJKの大好きなスタバが家の近くや学校の近くにあるのが最高らしい。
田舎者の基準だとこのくらいで都会だと感じるのだ。
この前まで銭湯の瓶のコーヒー牛乳を飲んで喜んでたくせにいつのタイミングでスタバが好きになったのかと思うが、きっと毎日充実しているのだろう。
なんでも新鮮に思えて些細なことで喜べるのは本当に幸せなことだと思う。
高校入学と同時に買ってもらった自転車で学校に行く顔が心なしかすまして見える。
たぶん慣れてくればここがそこまでの都会ではないと気が付くのだろう。
でも今は楽しそうで何よりだと思っている。
毎朝素敵な目覚まし。
娘が都会だと思っているここは駅前とはいえ自然に囲まれている。
家の前にも大きな木がたくさん生えている。
実は引っ越しの初日から花粉を感じるくらい目がしょぼしょぼ、くしゃみはでるが自然が多く環境はとてもいい。
毎朝鳥のさえずりが響き渡り目覚ましがなくても目が覚める。
ベランダにも時々鳥が遊びに来る。
たくさんの種類の鳥がいるのだろう。
フルートみたいな声で鳴くたぶん美人な鳥。
トイレの前の鏡でたむろする陽キャ軍団みたいに朝からおしゃべりが止まらない感じで鳴いているのは、あの人数の感じからスズメだと思う。
おなじみのカラスもいる。
一羽が鳴いて次に一斉にみんなが鳴くときがあって、あれはなにかの合図をしたのかなと考える。
引っ越しをすると周りの景色だけではなく音まで変わるのが面白い。
今の前は高校のグラウンドの裏だったので、野球部の朝練が目覚まし代わりだった。
「うす!」「うす!」と一通りの人数の挨拶が終わるまで朝はにぎやかでこれはこれで良かったが、
鳥の声も爽やかでいい。
大人は大人で、景色や音の変化にささやかな楽しみを感じている。
懐かしい鳥。
色々な鳥の声がする中でダントツに好きで、毎日声が聞けて嬉しい鳥がいる。
今まで名前なんて知らずに「田舎の鳩」と呼んでいた。
調べてみたらキジバトというらしい。
ホーホー♪ホホー
ホーホー♪ホホー
こんな風に鳴く鳩。
若いときに寮に入った時は田舎から来たメンバーでこの鳩の話で懐かしいと盛り上がった。
日本中の田舎にいるのだろうか。
私の思い出は小学校の夏休み。
ラジオ体操の帰り道に遠くの山からこのキジバトの声がしていた。
お腹ペコペコの帰り道。
朝はひんやりしていた空気がラジオ体操が終わったあたりからジリジリと熱くなってくる。
今日は誰と遊ぼうか考えながら帰るときに聞いた鳩の声だった。
サラッと言うがけっこう難しいのでは。
朝キジバトの鳴き声を聞きながら、娘がパンを食べていた。
私がこのキジバトの鳴き声が好きと話したら娘は真顔でサラッと言った。
「それにしてもこの鳩ってお互いにタイミングが合っててすごいよね」
「ん?」
何のタイミングの話をしているのだろうと聞いてみたらすごい思い込みをしていた。
娘はあの鳴き声は二羽で鳴いていると思っていたようだ。
「え?だってハモってない?」
吹奏楽部だからだろうか?
音の聞こえ方が違うのか?
ときどきとんでもない天然なことを言う。
ホーホー♪担当と
ホホー担当に分かれているかと聞いたらそれも違うらしい。
一羽目がホーホー♪と歌い、
ホホーを、二羽でハモっていると思っていた。
そうだとしたら二羽目は凄いタイミングで毎回合わせていることになる。
マジですごいと思う。田舎の鳩がそんな音楽的な才能があったらすごい。
「まさかー今のは冗談だって」
娘は急にそう言っていたが絶対最初のあの言い方は違う。
完全に二羽で鳴いていると勘違いしていたと思う。
ココ