ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

夢でした。SAAB900。

ドライブ・マイ・カーという映画が気になる。


濱口竜介監督、西島秀俊さん主演の映画でアメリカの「ゴールデン・グローブ賞」を受賞し、アカデミー賞も期待されているという。


なぜ見たいかというと、内容ももちろん素晴らしくそそられるのだが、その映画に出てくる車が好きなのだ。


SAAB900。



北欧スウェーデンの航空機メーカ「SAAB」の自動車部門がつくっていた車で見た目も個性的でこだわりの強い車だ。


夫と私は若い頃この車と共に過ごした。



夫は特にこだわりのない人だ。
これでなくてはならないという、主張をするわけでもなくどこに行こうかと積極的に提案するわけでもないタイプだ。

私生活も知り合った頃は、ビデオデッキさえも持ってなかった。双子の弟がオシャレで積極的なタイプなので同じ見た目でもこうも雰囲気が違うものかと思ったものだ。


そんな夫の数少ないこだわり。
どうしても好きで乗りたいと言った車。

それがSAAB900だった。


結婚前、私が車を買い換えようとした時。

乗って欲しい車がある。
きっと似合うと思う。
お金は自分が出す。
だっていずれどうせ自分のものに…


こんな事を言われた。

当初、お金を出してもらうつもりはなかったのだが、乗りたい車なのだろうというのは理解出来た。サラっと言った最後の言葉も気になった。

生産されていないクラシックカーなので、上司の知り合いの車屋さんに探して貰った。
オークション形式で、まだ携帯を持っていない頃に職場に上限をあげていいかの電話が何回も入った。上司の知り合いじゃなければこんなことは通用しなかったと思う。

そんな苦労をして手に入れた車は、驚くほど乗りずらい車だった。

重いドア。
乗りなれない左ハンドル。
よくわからない警告ランプ。

最初は騙されたような気持ちになったが、乗っているうちに不思議と愛着が湧いてきた。この車で出かける事が増え夫は本当に嬉しそうだった。

途中、結婚し子育てには似合わない車だったが、何年も乗り続けいよいよ修理代がかさむようになり泣く泣く手放した。一人目の子供を育てていた頃だった。



普通のコンパクトカーの乗りやすさに感動して子育てに奮闘中のある日。

夫がヤフオクでなんとなく車を見ていた。
夫の車を買い換える時期が来ていたのだ。

ちょっとこれ見て。

夫に言われて見せられた画面には凝りもせず
SAAB900が載っていた。

車検がけっこう残っていて
状態が良くて
こんな良いのはめったになくて
前回の一台目のオークションより安くて
今1人入札してて
のこり3日あるから
これは駆け引きが必要だなー


いろんな説明をされたが、どうせ落札できるわけないと聞き流していた。

買っていいと思っていた訳ではないのだが、過去にヤフオクで物が買えた事がなかったし前回のSAABはあんなに職場に電話が来るほど競り合ったのだからどうせ無理だろうと思った。なので気が済むならば試しにいれてみたらと思わず言ってしまった。

カチッ

やばい。すんません。買えちゃいました。


おめでとうございます!の文字だった。



オークションの早期終了というのがあるのを知らず、Gパンでも買うかのように車を買ってしまった男それを許した妻。



正直、中古車だし今時の高性能な車ほど高い車ではない。
人気もなく好きな人は好きというマニアックな車。修理代がかかる厄介な車だ。




オークションの先から
「かなり陸送代がかかりますが本当に大丈夫ですか」と連絡が来た。

楽しみにしていたが、その間夫にとって少し悲しい別れもあった。


南からこの北の大地に陸送されて届いたとき本当に嬉しそうで夫の悲しみを癒やす為やってきたようだった。

2台目のSAABは夫が乗った。

何年も乗るうちに内側の幌が剥がれてきて乗りながら頭に垂れてきても乗っていた。
北欧の車なのにだんだんエアコンが効かなくなって真冬に歯がカチカチするくらい寒い車内でも乗っていた。


転勤のたびに対応できる車屋さんを探し、壊れると部品を取り寄せ治す。お金がかかるからいい加減やめようといいつつ、なかなかふんぎりがつかずに乗り続けた。
当時仕事が忙しかったり、色々大変だったがこの車を所有し乗ることが張り合いになっていたのだと思う。

いつも夫が帰宅すると音で分かった。


全然快適ではなかったが、夫にとってこれだけは夢だったのだから人生で二回も乗れたし叶って良かったと思う。

でも・・・・・


スマホの画面でオークションを見ていても絶対に無視しようと思っている。




ココ