私について

喉から手が出るほど普通に憧れた数年間。

私について

いついかなる時も自分自身の人生に集中していない気がする。
無邪気に目の前のことに集中できるのは本当に幸せなことことで、
歳をとればとるほど考えは複雑になっていく。

楽しいことをたのしめない。



年末、夫の実家で毎年恒例の餅つきをする。
親戚が集まる楽しい時間。

誰がうまく丸められるか笑い合う。
そんな時も常にどこかの片隅にある気持ち。

実家のお母さんにも送ってあげたらと言われ、有難く餅を箱に詰めながら思う。


私は幸せになってはいけない。
楽しんではダメだ。
自分だけ普通の暮らしに参加したら
私は裏切り者。
不健全な思考。


健全な家庭で優しい人ばかり集まり
ごくごく普通の正月や幼い頃の思い出話に花を咲かせる時間。
自分のどす黒い正体がバレたらどうしようとどぎまぎしている憂鬱な時間。


年末。
お盆。

ご馳走を前にして思う。
母は今頃何を思い何を食べているのだろう。
父はどこで何をしているのだろう。
自分は何一つ楽しめない。
何を食べても味がしない。

自分の築いた家族、嫁いだ家族、
大切な子供。
いかなる時も100%の集中が出来ない。

くるくると忙しく動きながら、普通を演じている。
動き回っていれば正体がバレないと思っているかのように。

余計な思考。


できればどこかに消えてしまいたい。
そんなことを考えた時期もあった。

あの失った家さえあれば、私も人並みに人生に集中出来たのだろうか。
考えても仕方ない事を毎年考える。

ギャンブラーの父が人並みにおじいちゃんをやっている姿を想像してみる。
私の子供が老犬になったクロと遊んでいる姿も浮かぶ。
母の作ったご馳走をみんなで囲むあの家。
競売にかけられたあの家。
一瞬だけ夢を見て嬉しくなった。


そして、普通の暮らしへの憧れをかき消すかのように固く目を閉じる。

繰り返す自問自答。



夫にも、我が子にも、母にも、義母にも、もちろん父にも。
誰にも言えるわけなかった過去の自分の暗い気持ち。


随分偉くなったもんだね

裏切り者
あなただけ幸せになってずるい
立派な家庭、立派な夫
いいご身分
いいお子さん。


誰か何か言った?
誰も何も言ってないのに。

たぶん勘違いで自分が自分にたいして思っている言葉が聞こえたんだろう。




お盆。
正月。


それぞれが終わり日常に戻った頃、ようやく緊張がとけ、自分自身を少しだけ取り戻す。



ただいま。
おかえり。

あー疲れた。

ようやく目を背けたいことから遠ざかり少しだけ自分の人生に集中できる。

かっこいいばあさんになって。



道を歩く。
頭の中の雑念と一緒に散歩をする。


私は私の作った家族の未来に集中しなければ。
こんな頭の中がぐるぐるした状態で自分が幸せになって夫を幸せにできるだろうか。
いつまでもこんな感じでいてはいけない。
わかってはいるのだ。



夫は何も気づかないフリをしながら
本当は何もかも分かっているのかもしれない。
私が色々演じているように、夫も
能天気な顔を演じているのかも。




老後はカッコイイ元気なばあさんになってよ俺もカッコイイじいさんになるよ。
そんな事を夫は時々言う。




ココ

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