陰キャの特技。
勉強も運動もたいしたことがない子供だったが、ひとつだけ得意な事があった。本読み。
今で言う音読である。
国語の授業で、先生に当てられ教科書を読むのが超得意だった。
唯一の輝けるステージである。
先生に当てられるとよっしゃぁ!と内心思いながら読んだ。
私が読み出すと、教室が静まり返り、誰かが
「すげぇうめーな」
とかつぶやいたりするのが、なんとも快感だった。
今考えると小賢しい陰キャだ。
本を読み登場人物の人生を疑似体験をした気分。普段から、文字を追うことで妄想音読みたいなことをしていたから、声に出して読むのも簡単にできたのだと思う。
音読に第二のステージ。
大人になり親になった。
得意なことが活かせる場が読み聞かせだ。
子育てで私が絵本を読むと、子供はよく号泣しながら泣き疲れて寝た。
読み聞かせといえども、本気で情感たっぷりやりすぎるからだ。
子供は毎回同じところで、感動して泣いてしまい嗚咽しながら寝る。
それでも毎晩のように読んで欲しいという本があった。
ないたあかおに。
人間と仲良くなりたい赤鬼の為に、青鬼が一肌脱いでわるものになる。
赤鬼がうまく馴染んだ頃に、青鬼が置き手紙をして1人旅に出る。
赤鬼は青鬼の存在の大きさに今更ながら気づき、懐の大きな優しさを知り1人残され泣く。
最後の青鬼からの手紙を一呼吸置いてから、ゆっくりしっとり読みはじめる。
そのあたりから幼稚園児の目に涙が溢れ止まらなくなるのだ。
なんで青鬼は違う街にいってしまったの?
青鬼が悪い奴じゃないと。人間に教えてあげれば、良かったのに。
青鬼は寂しかっただろうね。
そうだね。
zzz…
寝たか…
純粋な幼い子供の感想は素直だ。
でも果たして青鬼は不幸だったのだろうか?
わたしの頭の中の対話がはじまる。
青鬼は、赤鬼の役にたちたかった。
自分の活躍で赤鬼の理想を手に入れたのを見てたぶんすごく満足だった。赤鬼の望みが叶うのは自分の事のように嬉しい。
機嫌がいい様子を見ると安心する。
困っているとすぐ助けたくなる性分。気持ちがよく分かる。
でも、青鬼は自分を変えてまで、そもそも鬼だから悪いやつとか決めつける人間達と仲間になりたいなんて1ミリも望んでいない。
なんなら苦手な集まり。
赤鬼みたいにうまく馴染むのはやればいいんだろうが疲れる。
そもそも人間達に媚を売る陽キャの赤鬼もなんか違う。
これ以上いると赤鬼まで嫌なやつに思ってしまいそう。
鬼である自分をすっかり忘れて毎日人間を招いている赤鬼。
無理。
でも赤鬼が幸せそうでよかったと心から思う。生き方や考え方が違うのだろう。
安心したからそろそろ潮時だと思って時期を見計らっていたんだろう。
人間関係リセット願望。
私もあるけど、青鬼さんも
もしかしてそうだったんじゃないかと思う。
鬼関係リセット願望。
荷物を、まとめて赤鬼が気が付かないうちに旅立つ日。
事情や気持ちを伝えて見送られるのはごめんだ。
ましてや謝られたりしたら大変だ。
しがらみから離れる時、きっと心晴れ晴れ鼻歌混じりで出発した。
人一倍繊細だから1人でいるのが楽。冷たい訳ではない。
それが青鬼の生き方なんだろう。
生き方や考え方は鬼それぞれだ。
そんなことを考えた。
大人の感想は非常に屈折している。
ココ