ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

大失態。でも温まるこころ。

世の中親切な人が多い。


人との出会いには本当に恵まれて生きてきた。


20代からずっと人の親切に支えられて暮らせていた気がする。
今のように人と出会う機会がなかなか持てないコロナ禍はなんだか人間からリアルで人と話すチャンスを奪ってしまったように思う。


それが二度とその人に会うことがないような、その場限りの出会いであってもすべてが宝物で財産だ。


今回の寒波。
北国の私の地域は、しばれる寒さが続いた。
凍ってしまいそうな数日間。

大変ではあったが、心があったかくなるような人の親切に
また出会うことが出来た。


凍みる。




記憶にまだ新しい去年はもっとえげつない豪雪だったし、もともと雪国育ちなので
記録的な寒波とテレビで言われても正直そこまで警戒してなかった。

なんの心構えもせずになめてかかっていたら、とんでもないハプニングの連続。
はじめての経験が続いた。



窓ガラスが凍り北向きの寝室は冷蔵庫と言うよりは冷凍庫のような寒さ。
部屋の中なのに息が白くなり、火の気のない部屋に置いたビールは飲み頃キンキンに冷えている。

日中の自分のためだけの暖房の灯油がもったいなくて、こたつだけで何時間か過ごしていたら手が氷のように冷たくなり鼻が真っ赤になっていた。

凍る窓。

朝の出勤前。

夫が早い時間に暖気しながら車内にいた。
一旦降りようとしたらドアの内側のゴムが凍ってしまいびくともしない。
スマホで外側から開けてくれと電話が来たので助けに行ったが全然開かない。
ほんの10分くらいの間にトランクを含む全部のドアが開かなくなった。
近所の人も助けに来てくれたがびくともしない。

「そのぐらい寒いってことだよねぇ」

仕方がないので窓から脱出して外からエンジンを止め、私の車で仕事に行った。
車は昼頃にドアがようやく開いた。



娘の高校も電車が止まり、危ないので早く下校するように言われて夕方のまだ早い時間に
バスで帰ってきた。


帰ってきてトイレに入っていた娘。
居間に来て言った。
「あのぅ」
「トイレがぜんぜん流れないんですけど。」

慌てて行って見ると水がうんともすんとも言わず、タンクは空っぽ。
窓が凍る極寒のトイレで、タンクに水を運ぶ水道管が凍ってしまい流れない。


まずい事にそれは小ではなかったようで、いろんなことをしても少しずつしか流れずちょっと萎えた。



仕方がないので狭いトイレの中にストーブをがんがんにつけて放置した。

暖かくなって溶けるまでしゃあないと女二人半ばあきらめている所に夫が帰宅し
大騒ぎの大パニックだ。

寝る前にでもふろの残り湯を流してみるからまずは早く風呂を済ませてくれと言っても
いつまでも風呂にも入らずトイレで流れないものと戦っている。

朝までの予想最低気温はマイナス8度。
今溶けてもどうせまた凍る。

明日も仕事だし、いいから早く寝ろと言ってもなかなかしつこい夫だった。

「あしたう〇〇できなかったら困る」

なにもそこまでと思うくらい悩んでいる。
最悪コンビニに行くなりどうにでもなるってば・・・
めんどくせえなぁとちょっと会話が嫌な感じになってその日は寝た。



次の朝。

懸念だった問題は、ふろの残り湯で何回か流したらどうにか流せると分かった。

これは気温が上がるまでこの方法でいいじゃないと思い、その日はほっておいて
ずっと雪かきをして過ごす。

暖かくなるし運動になるしエコ。



夕方になった。


夫が帰る。


わたしはすっかり忘れていたがすぐにトイレの話。

「水流れるようになったか?」
「そういえば、まだ」

「今一階の人の玄関先に作業服を着た業者さんが二人いたんだけどトイレ治してるっぽい・・・」


ではつぎの予約が入ってなければ我が家も見てもらおうかと言うことになる。

「よっしゃ」

夫が交渉しに行った。

数分後。
作業服でニコニコしたおじさん二人が入ってきた。

「おじゃましまーす」
「急におねがいしてすみません」
「全然いいですよー」

延長コードを使ったり、水道管を確認したり二人のおじさんが
素晴しい早さと連係プレイで作業する事わずか10分ほど。

ものすごい勢いで水が流れた。
思わず拍手で喜んだ。

さすがプロ!

御礼を言って、お金をお支払いしようとしたら、次の瞬間に信じられない事を言われた。


「実は私たち、業者じゃないんです。」


「・・・・」


その人たちは、職業能力開発のために職人さんを育てる専門学校の先生たちで
一階の方のお知り合いだったのだ。
とんでもない勘違い。


恐縮して、ではせめてものお礼とビールを渡そうとしても笑って絶対に受け取ってくれない。


「いいんです。今日から心置きなくう〇〇をしてください。困ったときはお互い様ですから。はっはっは」


そんなことを言いながら颯爽と帰っていった。

神。



正直気まずくて気まずくて、今思い出しても気まずい。
けれど本当にありがたかった。


マイナスの気温。
ドアが一瞬で凍る。
トイレの水が凍る。
部屋のペットボトルの水も凍っていたぼろくて寒い建物。


狭い玄関でビールを押し問答しながら
私たち夫婦の勘違いを大爆笑して
笑いに変えてくれた人たち。



業者じゃないのでできませんと最初に断っても良かったのに。
なにも言わずに治してくれた。
作業が終わってから言ってくれた優しさ。

勘違いとはいえ、とんだ図々しい夫婦。
恥ずかしかったが、それを吹き飛ばすほどの明るさ。

人ってやさしい。

人の親切に触れるたびに、どんどん心が温まる。

北国の生活も悪くないなと、こんな時いつも思う。

                      ココ