短気は損気。
後先を考えずに怒りを口に出してしまうと、その場はスッとするかもしれないが
結局しばらくもやもやしたものが残ってしまう。
いやいや全然そんなことはない、思ったことはその場で言うべき派ならいいのだろうが
私は気にしいなので後からうじうじ悩む。
それにしても最近。
街を歩いていても怒っている人が多くなった。
イライラして言わなきゃ我慢ならないって感じなのだろう。
昨年の夏、私も人前で他人に怒鳴られお叱りを受けた。
それは100%私に原因があった。
なのでその人にはなにも思わないのだけれど、
その後の流れでちょっと思うことがあった。
怒涛の出発。
その日はとにかくふらふらしながら歩いていた。
寝不足と疲れと同時に変な興奮のような心持ちもあった。
その日は娘の吹奏楽の東北大会を見に行くために一人で電車で移動をしていた。
電車に揺られながらもやばいくらいの眠気。
実は前日まで夫のコロナ隔離看病生活が続いた後だった。
いい指導者に恵まれたり、たまたまその年にじょうずな子が集まったりという幸運にも恵まれ
地区大会、県大会と勝ち進んだ。
娘が濃厚接触者明けで抗原検査を二日続けて陰性になり出場可能になるのが大会前日。
夫の発症日から日数を数えてみるとぎりぎりセーフ。
緊張の検査を経て出場できることになりホッとして娘を見送った。
きっと本人以上に夫が一番責任を感じていたし緊張しただろう。
思い起こせばこの夫は前にもこんなことがあった。
息子の修学旅行前にインフルを持ち込んでしまい息子に感染し、病院では出校停止で行けない言われた。先生方が発症日の解釈を相談してくれて結局、前日に電話がきて行けることになった。
当然ながら夫に悪気などないのだけれど能天気で楽観主義者なので感染対策も甘く
ちょっとイラっとすることも多かった。
「今回は出場できたからいいけど、まじで今度からはもっと気をつけてくれ。
どれだけ今までコロナに神経つかってきたと思ってんの?!」
わざわざ言わなくてもいい意地の悪い事を口に出して言う。
塩をかけられた菜っぱのような感じで夫は言った。
「ごめんな。寝不足で疲れてるだろうから気をつけて行ってきてな」
余計なことを言わなければよかった。
前しか見ていないせいで・・・
大会のある駅に着いた。
駅から会場まで20分くらい。
時間はたっぷりあった。
歩くか?どうする?
駅前のロータリーをうろうろして、たくさんある中でどこのバス停か探していた。
乗り場を見つけ、乗ると決心できずになんとなくそこに立ってみた。
バス停の時刻表って単なる目安なのかとおもうくらい、時間になっても来ない。
20分くらいたっても来ないのでとなりに立っている人に聞いたが、
私も何分のが来てないのかよく分からないんですと言っていた。
この土地の人ではなさそうだった。
やっぱり歩こうかなと思い始めた頃、急に2台まとめてバスがやってきた。
ならば乗ろうかなと思ってバスを向いたら一斉に人が集まった。
「ちょっとあんた!さっきからなんなの。こっちは並んでんだよ!
はっきりしない場所に立って横入りはずるいだろ。ちゃんと周り見ろよ。まったく」
びくっとして後ろを見たら、左側にすごい列があってみんな並んでいた。
なんにも気がつかないでバスの時刻表の真ん前に立っていたので、先頭に並んでいたその男性は怒り心頭だったのだ。
「すみませんでした。列に気がついていなかったです」
めちゃくちゃペコペコしながら最後尾まで行って並びなおした。
恥ずかしすぎるし、バカすぎる自分がちょっと情けない。
普段バスに乗らないのと、周りを見なさ過ぎてまったくその状況に気がついていなかった。
怒るのも当然だろう。ものすごい大声だった。
久しぶりに人に怒られて顔が真っ赤になりながらバスに乗り込んだ。
吊革につかまって何気に周りを見たら怒鳴った人の前に立っていた。
同年代くらいの夫婦で、私を怒鳴った男性はずっと小声で奥さんに怒られている。
「何もあんなに人前で怒鳴ることないじゃない。はずかしい。」
「あの場であなたが一番目立ってたわよ」
「みんなあなたの事を見てたわよ」
聞きたくなくても聞こえてくる会話。
気まずい・・・
東北大会の会場に着いた。
ようやく気まずさから解放されると思っていたら、その夫婦を含むバスに乗っていた人のほとんどがそこで降りた。
最近の吹奏楽の大会は、コロナの最初に比べると制限も緩くなってきたが
それでもやはり短時間で自分の子どもの演奏を見てすぐに帰る人が多い。
時間にしてほんの10分にも満たない子供の観覧のために遠路わざわざ足を運んでいる。
毎回必ず何校かある、○○高校は辞退です。
きっとコロナによって涙をのんだ子たちだろうと思うと辛い気持ちになる。
結果はどうあれ、出場できたことに感謝。
感慨深い思いで演奏を見た。
考えてみると夫だって見に来たかったはず。
きつい事を言われてやっと気づく
きつい事を言われる辛さ。
ほんとうに世間は狭い。
本番の演奏が終わり次の出番の学校までの短い時間で、一気に帰る人が立ちあがる。
チケットに連絡先を書いたものを帰りがけに提出して帰るのだが
そこでまたあの夫婦と一緒になった。
まさかとは思っていたが、たぶん同じ県代表の、同じ高校の親御さんだったようだ。
ちらっと目が合った時の奥さんの戸惑い。
え?まさかこの何百人もいる中であなた一緒の高校の親だったの?って思っただろう。
バスに乗らずに駅までの道のりをだらだら歩きながら考えた。
今後またなにかの大会であの夫婦に会うことになるかもしれないな。
意外と世間は狭い。
怒鳴ってしまった相手とめぐりめぐって
付き合わなければならない可能性だってゼロではない。
そもそも自分が間違えたのが悪いのだけれど、人に対しての物の言い方も考えなければなと
今回は学ぶ機会になった。
物のつたえ方。
最近Twitterで見た伝え方が賢いと思った。
ソーシャルディスタンスで距離をとってレジに並んでいる時
前に割り込まれたとき。
本当にずるい割込みかもしれないが、単なる勘違いでうしろに並んでいるのに気がついていないのかもしれないので
「すみません、お急ぎですか?」
って声をかけるといいらしい。
後ろからそういわれると、勘違いして割り込んでしまった人も間違いに気がつくし、
「おい、並んでんだよ」と言うより高圧的にならない。
自分の言いたいことは言えるが揉めずに済む言い方だと書いていてなるほどと思った。
それと、周りはちゃんと見なきゃだなぁ。
なにより自分が気をつけるべきはそこだろう。
ココ