私について自由

勉強代、5分4000円。

私について

私と夫はことごとくはずれる夫婦だった。
食べ物屋さん。宿。
今考えると、最高に美味しかった思い出やスムーズに事が運んだ時よりも、失敗談のほうが心に残っている。


いつも思いつきで行動。

まだ結婚する前、急に夜中に思いついて次の日二人で北海道に行った。
今のようにネットで調べられる時代でもなく、何の計画も立てずに出発してまあまあ夜中に某市に着いた。なぜどこの街なのか内緒にするかというと北海道に失礼なようなエピソードだからだ。

夫はいつも旅は行き当たりばったりが面白いよねという。
今思うとよくこんなに何も決めずに行動できたもんだと思う。
宿さえも決めてなかった。
そして着いたものの、やっぱりどうしていいか分からずとりあえずタクシーに乗った。



20代の汚い古着を着た貧乏そうな若造二人。
普通に安いチェーン店でも連れて行ってもらえば良かったのだ。

たぶん私にカッコつけたかったのか、夫はなんか変なテンションになっていた。

きっと頭の中では北海道の驚くほどの海の幸を堪能させようと思っていたのだろう。
たぶん心配でそうとうお金をおろしてきたはずだ。
そして、考えが甘いのでなにも調べずに、「金さえあれば何とかなるべ」と思っている。


いつものように東北訛りを隠しているが隠しきれていない。
きどったおかしな標準語のイントネーションで運転手さんに
「どっか運転手さんの知ってる穴場のいいとこ連れてって」と告げた。
若造なのにやけに気取りすぎた。

その瞬間になんか嫌な予感がした。

「まかせなさい。おじさんの知り合いのお店に連れてくから」

タクシーはなぜか、にぎやかなお馴染みの通りをどんどん過ぎていく。
たくさん食べ物屋さんがあるのに何軒も通り過ぎた。
もうここでいいですと飛び降りたい気分だった。
全然訳が分からないところを延々と走っている。
なぜか景色がどんどんさびれた裏通りになっていく。

不安でしょうがなかった。



嫌な予感

「着いたよ。」



数分後。

私と夫はなぜかスナックのカウンターに座っていた。
向かいには雰囲気西川峰子風ママがいた。

怖い・・・

何でどうしてこうなった?
えっとどの辺が海の幸?



私と夫。
ふたりともボロボロのデニムにリュック姿。
鴨が財布に札束をたんまりいれて入れて二羽。
止まり木に止まって震えている状態だった。


ウイスキーが、お好きでしょ


瓶ビールを飲みながら、夫はやけにへらへらしながら峰子に気を遣って敬語で話していた。
「北海道の海の幸を食べに来ました。へへへ」と頭を搔いている。
どうぞつまんでと豆と、ポッキーが出された。

なんで
そもそも
ドアが開いた瞬間に夫は
吸い込まれるようにはいったんだろう?

腑に落ちない気持ちで豆を食べながら考えていた。
だんだん夫にも峰子にも腹が立ってきた。
そして、
きっとこのままではヤバイ・・・



峰子が向こうを向いた瞬間に私は夫を鬼の形相で見た。
「帰るよ今すぐ!」と声を出さずに目で訴えた。

夫が言った。

「帰るんで会計してください」
「じゃ4000円ね」


滞在時間約5分くらい。

数分後、よくわからない道を重いリュックを背負って二人歩いていた。


「きっとあのままいたらもっとやばかったよー。何万も請求されたかも」


「すごい穴場が中にあるのかとおもった」

夫はまだ能天気なことを言っている。


それからかなり歩き、おなかがペコペコ状態で足が棒になってから食べたラーメン。
本当に涙が出るほど美味しかった。
そう考えると恐怖体験ツアーがあったからなおさら美味しかったのかもしれない。



スナックのドアにノックするライオンみたいなのがついていたのだけハッキリ覚えている。
今でもライオンが付いたドアを見るとあのスナックを思い出す。

30年くらい前だからさすがにもうないんだろう。
でもどこでもドアがあって過去を見れるならあの時のピンチを陰から見たい。




いつも微妙。

こんな調子だからいつも失敗する。

三陸を車で旅した時も何軒も並んだウニ丼の店。
すごく人が並んでいる店が奥に見えているのに、

「ウニは同じウニなんだ。」
そう言いながら何も考えずガラガラに空いた手前にある店に入る。

そして信じられないくらい美味しくなかった。

ちょっとひねくれもののところがあるのかもしれない。


はずれの歴史は数知れず。

誰も人がいないドライブイン。
すみませんと何回呼んでも出てこないようなおっさんがやっている定食屋。
いつ通っても空いているラーメン屋。
入ってみても穴場に当たった試しがない。



最近は、あらかじめ調べるようになって滅多にこんな失敗はなくなった。


なんだかちょっと、久しぶりに
「ほらみたことか、やっぱりはずれだった。」
そんな悪態をついてみたい気もする。



そしてたまにある、夫の直感で入って成功だった店。
失敗が多いだけに、やけに嬉しい。




              ココ

コメント

  1. ココココ より:

    moccheeさんこんにちは。
    面白そうな予感がして訪問させて頂きました笑
    読んで頂きありがとうございます。
    数十年後にブログネタになったので、良しとします
    (о´∀`о)

  2. mocchee より:

    私のブログに訪問いただきありがとうございます。こちらも遊びに来ました。
    旅の失敗、笑って思い出せるようになればドンマイですよね。
    >でもどこでもドアがあって過去を見れるならあの時のピンチを陰から見たい。
    いや、入る前に助けてやってくださいよ(笑)

  3. ココココ より:

    Nick Ollieさん
    宿はなかったら詰むよね。
    とにかく食べるために並んだり待つ意味が分からないって感じだった。
    でも人が並ぶのはやっぱりおいしいからなんだよね。

  4. ココココ より:

    アスポンさん
    昔は外食でドライブインってパターンがあったですよねー。
    自分が子供の頃ですね。
    海水カレーはひどすぎる・・・

  5. ココココ より:

    akazukinさん
    峰子は勢いがあって蛇に睨まれた蛙になりますね(*´Д`)

  6. ココココ より:

    パッパコメントありがとうございます。
    うちの夫も忘れたふりしてますねー(*´з`)

  7. ココココ より:

    チチさん
    笑ってやってください(*’▽’)

  8. ココココ より:

    五郎さん
    我が家はけっこう勘悪いかもです(*_*)
    でも貧乏舌なんでなんとかなってる・・・

  9. スティンガー五郎 より:

    すみません、名前を下記忘れました。

  10. 匿名 より:

    私の妻も食べ物に関して勘が全く働かない人で、直感に従って入ったお店はどこも失敗ばかりで美味しい料理にありつけた試しがありませんでした。

    今は私が調べたり、勘で入ったりしていますが、まぁまぁアタリを引いています。

  11. チチ より:

    なんで人様の失敗って笑えるんだろう(笑)
    面白かったです(笑)

  12. CARLパッパ より:

    楽しく読ませて頂きました。
    でも ご主人んの気持ち ボクには理解できるな~。
    ボクも かみさんと結婚する前後に 失敗談や 遠くまで来て『がっかりさせないで。』と言われた事が間々あります。
    今はその時のことは 忘れたふりはしてます。

  13. AKAZUKIN より:

    思い立って、ぱっと出発できるフットワークの軽さが羨ましいです〜。
    西川峰子風のママ…笑
    この時点ですでに、ちょっと怖い…笑

  14. 旦那さんに限らず、昔は調べもつかず、外れクジにあたる確率は多かったという事を思い出します。

    また、昭和の方が、グルメなところが少なかったので、ひどかったです。

    今は、ちゃんとした店でなくドライブインちっくなところでさえもグルメで美味しいけど、
    昔は、ほんとうひどかったです。

    なまじ、現代は、業務用の半完成品の食品使うから、腕前の足りない人間の作ったものでも
    そんなに酷くありません。
    極端にまずいものにでくわす確率は減っている気がします。

    私が忘れられないほど、マズいのは海の家の、海水が混じっているとしか思えないカレーライスです。
    海の家には最初から期待しないにしても、本当、ひどかったです。
    井戸水に海水が混じっている地域のようで、そういう水で調理したと思われます。

    ちゃんとした店構えの店に入った場合でも・・・
    グルメ情報が少ないので、とんでもない味付けも多かったように思います。甘過ぎるとか、塩辛いなど。

  15. Nick Ollie より:

    回りから見てると、とっても楽しく読めるけど、当時のまだ若い当人たちにとっては冷や汗ものだっただろうねぇ。
    だけど思いつき旅行は楽しい。ダンナ様の気持ちも分かる。1回東北に思いつき旅行したことがあります。ゴールデンウィークなのに適当に行ったら、宿がなくて大変だった。当たり前だけど。で、それこそつぶれそうなボロボロの宿を夜遅くにやっと見つけたという、、、 それ以来、宿だけは確保するようにしてます。
    やっぱ行列ができてる店は、それなりに美味しかったりするから人気な訳で、、、 その手前で人がほとんどいないお店はハズレる確率高いよー。

  16. ひでぴん より:

    行き当たりばったりの旅、独身時代、ひとりではではよくやっていましたね。
    ひとりだと多少の失敗も、ま、自分が選んだのだから…と諦めつきますけど、
    ツレがいるとそうもいきませんかね😅
    失敗談ものちのち笑って話せればよしなのかな💦

  17. きままなマーシャ より:

    過ぎてみたら、いい思い出になりますね^^
    時代と若気の至りもあるのでしょうね。
    小説になりそうなお話、
    楽しかったです(*^^*)

  18. たまぞう より:

    おー、気づいてよかった!
     豆とポッキーで4000円かー…
     体が震える〜;

  19. simsim より:

    夫さん、失敗してもあまり気にしないタイプの人なのかな(笑)
    ある意味、大物ですね!
    うちも結構行き当たりばったりの旅をすることはありますが、宿は決めていきますね。
    でも、スマホがあるから旅先でもいろいろ調べられるので、大きく外れたお店に当たることはないかも(笑)
    ネットがない時代の旅ってちょっと興味あります。

  20. やよい より:

    今回も楽しませてくれましたねww
    タクシーの運ちゃんに「どっか運転手さんの知ってる穴場のいいとこ連れてって」と
    言ったのが間違いだよねw
    何が食べたいかしっかり伝えたら、西川峰子風のママにも出くわすことが無かったのにwwい旬
    でも、青春の1ページ。
    中年期に入って思い出すと面白さ倍増でしょうww

  21. 昔ならではの笑えるエピソードですね。
    ネットの無い時代は色々調べる事が今ほどできません。
    ガイドブックはある事はあり、それなりに調べをつける事が出来るものの、
    お金がいちいちかかるので、行きあたりばったりになる事もあります。

    しかしタクシーの運転手の中には善良とは言えない人もいますね。
    知り合いの店を紹介したい気持ちはわかるのですが、
    あまりにもお客さんの要望にそわない店じゃないでしょうか。
    変な裏通りの店で、海の幸でも何でもないような…

    スナックに連れていくとは、恋人同士二人連れにはふさわしくない感じ。
    西川峰子風のママがいるんですね。

    ボロボロのデニムにリュック姿で、あまり金持ちそうな姿ではないのにカモにされるとは驚き。
    でも旅行者はそんなに気取った恰好でなくても
    まっとまったお金を持っているのはバレているんですね。

    しかし滞在時間が5分程度でたいして飲み食いしてないし、
    たぶんお通しを食べ、1杯飲んでる程度なのに
    4000円とはとんでもないぼったくりですね。
    早く帰える判断をしたのは偉かったです。
    あのまま、そんなボッタくりのスナックにいたら、
    どんだけ絞られるか分からないですね。

    それから、ピンチから脱した後のラーメンは、
    美味しく感じたのですね。
    しかし、ヤバい体験ですね。

    ライオンの顔のついたノックというのは見た事あります。
    今後、そのドア見ると、今回、このブログで聞いた話を思いだしそうです。

    旦那さんの外しエピソードは未だあるんですね。
    あえて、行列の店を外し、ガラガラの店を選ぶ・・・
    穴場にあたる可能性はありますよね。

    人のいない穴場の店とか穴場の観光スポットにあうと嬉しい気持ちはわかります。
    人に知られていない店にいいのを見つけると、じぶんだけのお宝を見つけた
    何とも気持ちいいようなところありますよね。
    人が知らないものを知っている何ともいえない気分です。

    素朴で商売じみてないところの方がもっといいものがありそうだと期待もあります。

    でもやはり、皆がいいいという物がいいという事のほうがいい場合も多いのですよね…(^^;

    今、調べていくから確かに失敗は少ないですが、思いがけない発見にも乏しいです。
    失敗もおもしろくもありますね…( *´艸`)

  22. ぽぱい より:

    あ、オイラは20代の頃。
    歌舞伎町で30分で15万円請求された事がありますよ😅
    3人なので1人5万です。

  23. 鳥天 より:

    そういやネットがない時代のお店探しって賭けだったよなぁ。こういう汚い店が旨いんだとか何とか連れていかれた店はまずかったなぁ~(*´艸`)

  24. 博多にわ男 より:

    面白い。。。面白すぎる🤣🤣

  25. 土偶のどっ子 より:

    気になりますね、西川峰子風ママ(笑)
    30年前なら怖かったけど、今なら会話はずんだりして🤭
    思い出に残る旅って、以外と失敗した旅なのかもしれませんよね。何十年たっても忘れない。そういう意味では、行き当たりばったりもいいのかも。イチかバチか、ギャンブルみたいだけど😉