ココからのブログ

昭和生まれの50代ココです。

勉強代、5分4000円。

まいかいはずれる。

私と夫はことごとくはずれる夫婦だった。
食べ物屋さん。宿。
今考えると、最高に美味しかった思い出やスムーズに事が運んだ時よりも、失敗談のほうが心に残っている。


いつも思いつきで行動。

まだ結婚する前、急に夜中に思いついて次の日二人で北海道に行った。
今のようにネットで調べられる時代でもなく、何の計画も立てずに出発してまあまあ夜中に某市に着いた。なぜどこの街なのか内緒にするかというと北海道に失礼なようなエピソードだからだ。

夫はいつも旅は行き当たりばったりが面白いよねという。
今思うとよくこんなに何も決めずに行動できたもんだと思う。
宿さえも決めてなかった。
そして着いたものの、やっぱりどうしていいか分からずとりあえずタクシーに乗った。



20代の汚い古着を着た貧乏そうな若造二人。
普通に安いチェーン店でも連れて行ってもらえば良かったのだ。

たぶん私にカッコつけたかったのか、夫はなんか変なテンションになっていた。

きっと頭の中では北海道の驚くほどの海の幸を堪能させようと思っていたのだろう。
たぶん心配でそうとうお金をおろしてきたはずだ。
そして、考えが甘いのでなにも調べずに、「金さえあれば何とかなるべ」と思っている。


いつものように東北訛りを隠しているが隠しきれていない。
きどったおかしな標準語のイントネーションで運転手さんに
「どっか運転手さんの知ってる穴場のいいとこ連れてって」と告げた。
若造なのにやけに気取りすぎた。

その瞬間になんか嫌な予感がした。

「まかせなさい。おじさんの知り合いのお店に連れてくから」

タクシーはなぜか、にぎやかなお馴染みの通りをどんどん過ぎていく。
たくさん食べ物屋さんがあるのに何軒も通り過ぎた。
もうここでいいですと飛び降りたい気分だった。
全然訳が分からないところを延々と走っている。
なぜか景色がどんどんさびれた裏通りになっていく。

不安でしょうがなかった。


「着いたよ。」



数分後。

私と夫はなぜかスナックのカウンターに座っていた。
向かいには雰囲気西川峰子風ママがいた。

怖い・・・

何でどうしてこうなった?
えっとどの辺が海の幸?



私と夫。
ふたりともボロボロのデニムにリュック姿。
鴨が財布に札束をたんまりいれて入れて二羽。
止まり木に止まって震えている状態だった。


瓶ビールを飲みながら、夫はやけにへらへらしながら峰子に気を遣って敬語で話していた。
「北海道の海の幸を食べに来ました。へへへ」と頭を搔いている。
どうぞつまんでと豆と、ポッキーが出された。

なんで
そもそも
ドアが開いた瞬間に夫は
吸い込まれるようにはいったんだろう?

腑に落ちない気持ちで豆を食べながら考えていた。
だんだん夫にも峰子にも腹が立ってきた。
そして、
きっとこのままではヤバイ・・・



峰子が向こうを向いた瞬間に私は夫を鬼の形相で見た。
「帰るよ今すぐ!」と声を出さずに目で訴えた。

夫が言った。

「帰るんで会計してください」
「じゃ4000円ね」


滞在時間約5分くらい。

数分後、よくわからない道を重いリュックを背負って二人歩いていた。


「きっとあのままいたらもっとやばかったよー。何万も請求されたかも」


「すごい穴場が中にあるのかとおもった」

夫はまだ能天気なことを言っている。


それからかなり歩き、おなかがペコペコ状態で足が棒になってから食べたラーメン。
本当に涙が出るほど美味しかった。
そう考えると恐怖体験ツアーがあったからなおさら美味しかったのかもしれない。



スナックのドアにノックするライオンみたいなのがついていたのだけハッキリ覚えている。
今でもライオンが付いたドアを見るとあのスナックを思い出す。

30年くらい前だからさすがにもうないんだろう。
でもどこでもドアがあって過去を見れるならあの時のピンチを陰から見たい。




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いつも微妙。

こんな調子だからいつも失敗する。

三陸を車で旅した時も何軒も並んだウニ丼の店。
すごく人が並んでいる店が奥に見えているのに、

「ウニは同じウニなんだ。」
そう言いながら何も考えずガラガラに空いた手前にある店に入る。

そして信じられないくらい美味しくなかった。

ちょっとひねくれもののところがあるのかもしれない。


はずれの歴史は数知れず。

誰も人がいないドライブイン
すみませんと何回呼んでも出てこないようなおっさんがやっている定食屋。
いつ通っても空いているラーメン屋。
入ってみても穴場に当たった試しがない。



最近は、あらかじめ調べるようになって滅多にこんな失敗はなくなった。


なんだかちょっと、久しぶりに
「ほらみたことか、やっぱりはずれだった。」
そんな悪態をついてみたい気もする。



そしてたまにある、夫の直感で入って成功だった店。
失敗が多いだけに、やけに嬉しい。




              ココ