出会い

同じ歩幅で歩けるということ。

出会い

朝、唐突に思い出した。
「そういえばクリスマスイブじゃない!」
今日は記念日だった。

夫に言うと怪訝な顔で言った。


「え、なにが?」



四半世紀以上前の事だから、忘れるのもそりゃー無理はない。

子供にとってのクリスマス。




子供3人が家にいた頃のクリスマスと言えばプレゼントをこっそり置いたり、
ケーキやチキンを食べたりがメインだった。


我が家は玄関にクリスマスツリーを置いて、その下にプレゼントを置くシステムだった。

娘がサンタさんに手紙を書いて、お酒とポテチを置いたりしていたが
後から聞くとサンタさんの姿が見たくて夜遅くまでこっそり起きていた時に、
夫がそのお酒をサンタさんが飲んだと思わせようと、プシュっと開ける音を聞いてしまった。

「ああやっぱりサンタさんはお父さんじゃないか」と色々と合点がいったと聞いて
申し訳ない事をしたと後から思った。


それでも子供たちは、なんとなく分かっていながらも朝になると走って玄関まで行き
「あったあった」
「やったー」

と大喜びだった。

たいていクリスマスの朝は雪景色で、外は真っ白。
目覚めた瞬間のまぶしい白い朝の期待感。
分かっていても一回サンタさんを通して届く親からの想い。

やはりウキウキする特別な日なのだと思う。



幼い頃のクリスマスの思い出。


自分の子供の頃と言えば、親は笑ってしまうくらい夢がなかった。



私の家は、火葬場だった。


途中で何回も役場で建て替えの話が出ては立ち消えになるほどの古い建物で、
煙突は赤いレンガだった。

人が近づかない街のはずれにひっそりと建つレトロな建物。

その隣の木造平屋の管理人用の小さな家が我が家だった。
家の真ん前には高い杉の木が一本立っていて、周りにはたくさんの桜の木。


火葬場の前にはレンガで組んだ花壇。



用がなければだれも近づかない寂しいその場所。
今から考えると一面の雪景色と煙突の赤、木々と小さなおうち。
まるでクリスマスケーキの上の飾りのような光景にも思える。

寂しい不吉な場所なのにメルヘンを感じるのも過ぎた時間がそうさせるのかもしれない。



私の子どもの頃。
サンタなど周りの誰も信じてはいなかった。
でも煙突の真下に立って後ろにひっくり返るほど高い煙突を見上げながら考えた。


「サンタクロースがこれを登るとしたらどこに足をかけるのだろう?」

もしかしたらとサンタクロースという存在をどこかで意識していた何歳かのある日。
そんな事を考えたある一瞬が確かにあったという記憶。




父は道楽者でまったく家にはいなかった。
私が期待しながら枕元につるした靴下にはパチンコの景品のお菓子だったり、
飲み屋でもらったお菓子の長靴だったり、
ひどいときは500円札とパチンコに負けた時の洋酒のガムが入っていたこともあった。
そして必ずあったのが丸いバターケーキ。

それでも自分のために用意された何かがあるというだけで
子供の私はそれなりに嬉しかったのは間違いなかった。

あれはあれで立派なサンタだったのかもしれない。





縁というもの。

クリスマスイブ。



田舎に帰ってから、20代の私は紳士服屋で働いていた。


その年のイブはスノーボードに誘われショッピングセンターの仲間と行く予定があった。
お金はなかったが頑張ってローンで一式揃え始めたばかり。
車で30分も走れば行けるスキー場が何か所かあったので仕事が終わってから誰かに乗せてもらいナイターに行くことも時々あった。


その頃、夫は私が住んでいたその街で働いていた。


夫はその土地に友達もまだおらず、休日暇を持て余してはぶらぶらとウインドウショッピングをしていた。夫の事は一度、良く分からないシャツを売りつけたことがあり顔は覚えていた。

懲りずにまた店内に入ってきた夫を接客していたら、なんとなく当時ブームだったのでスノボの話になった。
夫は「いつも一人で滑りに行ってるんです」と言った。

「ちょうどクリスマスイブにこのビルのみんなでナイターに行くんです。
気楽な人達なんで良かったら一緒にどうぞどうぞ。大歓迎です。」



軽い気持ちで、集合場所と時間だけを伝えた。
その時点ではまだ名前さえも知らなかった。



ナイターの日にちが近づくにつれ、信じられないくらいの暖冬。
雪ではなくて時折雨も降ったりしていた。
一人二人とやっぱやめたと言い出し、最後には雪がなくてつまらないから中止ということになってしまった。


そのことを連絡する方法もなく、やきもきしながら過ごしていたら前日に夫が店に現れた。


「でも山まで行くとけっこう雪があるかもですよ」
「じゃ、行きますか?」
「車出します」


あとからこの時の事を夫は話す。


本当に誰かとスノボに行くのが楽しみだったので、中止が心底がっかりだった。
どうにかして人と滑りに行きたかったらしい。
そこに下心などは全くなく、このヒトに好きとかデートとか勘違いされたら困るとちょっと思っていたようだ。


雪のない、
全く寒くない
貸し切りのスキー場。
広瀬香美の流れる中、最悪のコンディションのスキー場で私は何度も転び、ぐちゃぐちゃになった。
そのたびに手を貸してもらいながら

「なんだこの人、喋んない人だな」
「なんかこの状況ははたから見たらラブラブカップルみたいでやばい」

そう思いながらなんだかとっても気まずかった。

そして数時間後。
帰りのファミレスで食べずらいナポリタンを頼んだことを後悔しながら、皿を持ち上げるかどうか悩みながら最後の数本と格闘していた。

夫はそれを見ながら

「なんだこの人、食べ方下手くそだな」
「変な人」


そう思っていたらしい。

そんな感じでお互い呆れながらその日は別れ
縁あって今家族になっている。






今では長女も長男もすでに家を出て別々に暮らしている我が家。
イブの今日、次女は友達と夕方から出かけると言った。


夫の口癖は「なんもいらない」だ。

でかいチキンはいらない。
焼いた一枚のモモ肉をはんぶんこで充分だ。
二人だけだから、ごちそうもいらない。
気張ったものは本当にいらない。
その代わりポテチとかジャンクなものを今日は好きなだけ食べたい。
山盛りの雑にちぎったキャベツに塩をつけて食べ
スーパーで買ってきたピザを食べながら
早い時間からお酒を飲んだ。



縁あって家族になる人と初めて出かけた記念日。


格好の悪い日常を自分たちのペースで歩ける日々。
これからも、このくらいの歩幅で歩いていきたい。

                       ココ


コメント

  1. 苔桃 より:

    映画の脚本みたいな出会いのエピソードだなと思いながら、ナポリタンのくだりで笑いました^ ^
    最後の
    「格好の悪い日常を自分たちのペースで歩ける日々」
    そうそうこれこれ、と思いながら、じーんとしました☆

  2. Tani より:

    こんにちは、おもいがけずに二人だけでいったスノボ、
    お互いに呆れていたとは言うものの、それ以上に引き付けるものがあったんですね。
    お二人の間の空気感というんでしょうか、いいですね。

  3. ぽぱい より:

    叔母の葬儀~納骨を終えて自宅に戻ると、華やかなごちそう。
    その時、 はじめてクリスマスイブという事が分かりました😅

  4. primex64 より:

    ココさん、ご主人の人格がじんわりと垣間見える描写です。そんな記念日もあったなんて。人との縁は異なもの・・。お二人の記憶中のの宝物ですね。。

  5. sam より:

    ご主人とはそういう出会いだったのですね(^^)
    自然体な関係で素敵だなって思います☆

  6. AKAZUKIN より:

    初のお出かけがクリスマスイブだなんて、ご主人と不思議なご縁があったんですねー。
    このまま映画かドラマになりそう!

  7. スティンガー五郎 より:

    サンタさんを信じていた純粋な子供の頃はクリスマスは一年のうちで一番楽しみな夜でしたね。
    早々にサンタさんの存在がこの世にないことを悟っていた私は、とにかくご馳走(足をアルミホイルでくるまれたチキン)とプレゼントと言う2つのアイテムが楽しみで仕方ありませんでした。
    年令を重ねるごとにクリスマスはやっつけ仕事になっていき、最近では何もしなくなりました。
    そのたびに、「ウチはクリスチャンでもなんでもないもんね」と、熱心な仏教徒でもないのにうそぶいていたりします。

    とあるTMCMに、「パパとママのもとにもサンタさんが来ますように!」と書かれたメッセージをサンタ宛に出す子供が登場するものがありましたが、今年ほど「ウクライナの人々にサンタが平和のプレゼントをもってきてくれますように!」と願ったことはありません。

    聖夜はどの国、どの人々にも平等にやってきますもんね。

  8. 冒頭の写真は、もしや子供の頃のココさん??

    クリスマスイブが記念日…。
    結婚記念日なら未だしも、その記念日は覚えてない気がしますね…(^^;。

    最初にでかけた日といっても、その時はカップルではないですよね。
    最初に紳士服売り場に買いものに来た日も記念日と言えるし、
    カップルになってから最初に出かけた日も記念日なので、
    何とも微妙なのですよね。

    玄関にクリスマスツリーを置いて
    その下にプレゼントを置くシステムを採用していたんですね。
    朝起きたら、プレゼントがあって、サンタ🎅さんからだと、
    ワクワクする演出だったんですね。

    自分のうちは、サンタさんだと思わせるような事は、特にしていなかった記憶です。
    ストレートに「クリスマスプレゼントだよっ・・・(^^)/」と、誕生日プレゼントと同じ感覚で
    親からプレゼントを渡されてました。

    お嬢さんときたら、サンタさんに手紙を書くとは可愛いです。
    お酒とポテチを🎅サンタさん宛に贈ったけど、お父さんが飲んでるのを目撃し、
    現実を知るんですね。

    でも、歌にも🎅「サンタはパパ♪」と言っている歌もあるぐらいです。
    サンタがパパでもプレゼントは嬉しいですよね。

    ココさんの子供の頃の環境は、かなり特殊ですね。
    他の子が経験できないような場面に居た事が、
    貴重な事のようにも思いますね。

    命の終わり終焉に関わっている…これは中々凄いです。
    夢がないどころか、人が経験できないような経験って貴重です。

    レンガの煙突とは、まるで、クリスマス🎄そのものですね。
    煙突自体、そもそも珍しいです。
    私の家には煙突は、なかったです。マンションなので。
    そもそもサンタが登る煙突自体、無いおうちが大半です。
    まるでクリスマスケーキの飾りのような光景ですよね。
    高い杉の木も、どことなくクリスマスを思わせる光景ですし、雪景色もいいですね。

    枕元につるした靴下に入るのがパチンコの景品でも
    今となってはいい思い出ですね。

    クリスマスイブにスノボに皆で行く事になったんですね。

    暖冬で、クリスマスの時期でも雪がないので、
    やめる人が続出していたので、今の旦那さんとデートに近い状況になりましたね。
    親しくなる切っ掛けのおおきな第1歩の出来事ですね。
    暖冬もある意味、いい役割をはたしてますね。

    この後、どんどん距離を縮めていくんですよね…(*’ω’*)
    縁あって結婚し、家族になる人とはじめて出かけたのがイブなんですね。

    カップルになる前ですけどね…。

    イブは、夫婦二人だけなんですね。
    「なんもいらない」が口癖になっていて、
    クリスマスに御馳走とか特別な事をする必要ないという感じなんですね。

    子供が大きくなり、家に居ないとなると、イベントはやらなくなる事は多いですね。

    煙突・・・身近では銭湯か工場ぐらいしか見ないです。

  9. 鳥天 より:

    ココさんすごいなぁ、もう30回以上夫と一緒にクリスマス過したのに、クリスマスの記憶に夫はあんまりいないわ(*´艸`)と言うか、初めてのクリスマスも出会いもあんま覚えていないや…

  10. 土偶のどっ子 より:

    だんなさんもココさんも、最初はお互いのこと全く意識していなかったんですね。どちらかというと「変な人」だと思ってた(笑)。それが、今、夫婦になってて、人生ってどうなるかわからないですね☺️
    うちの父も、びっくりするほど子どもには忖度しなかったなぁ。
    クリスマスっていう概念が父にあったのかなぁ?と今、思います。
    異教徒の祭りぐらいにしか、思ってなかったと思う‥(笑)

  11. やよい より:

    もし、ご一緒にとココさんが声を掛けていなかったら
    家族になっていなかったかも知れませんね。
    これは、ココさんが声を掛ける運命だったんですよ。
    ご縁ですね。
    素敵な出逢いです。

    メリークリスマス🎄

  12. きままなマーシャ より:

    自分たちのペースで歩ける日々。
    なんて心地よくて静かなんでしょう。

    クリスマス・イブっていいですね。
    世界が静かにきらめいて。
    誰のもとにも神のご加護がありますように。