最近つくづく思う。
寛容な人でありたい。
油断するとすぐ忘れて、
「なんだあいつ許せねぇ」
なんて下品な事を口走る。
鬼の首でもとったような。
この前アマゾンで買い物をして届くのを待っていた。
最近では日用品なんかも便利なのでアマゾンで買って置き配にすることが増えた。
無添加の洗剤と500mlのお茶24本1箱。
配達予定が過ぎても届かないなとちょっと気になっていた。
どっちも別に急いではなかったのだけれど、何度も玄関先を見に行った。
夜の9時過ぎても来ないので、さすがにおかしい気がしてメールを確認したら、随分前にお届けが完了しましたとなっていた。
しまった!
置き配を盗られたか?
一瞬だけそんなことが頭をよぎった。
けれど、考えてみると我が家はエレベーターのない4階建ての一番上だ。
用事のある人以外はめったに人が登ってこない。
朝、うっかり忘れ物でもしようものなら、車から自分の部屋までの往復で息切れでぜいぜいする。
アマゾンは置き配指定すると在宅していても玄関先に置いていってくれる。
時間短縮や感染対策にもなるだろうし、万が一留守だったときの為に私はいつも置き配にしていた。
お届け完了のメールには届けた際の写真がついているのだけど、画像を拡げて確認したらそこは我が家の玄関ではなかった。
同じドアなのだけれど我が家にはない飾りがついていたし、部屋番号をみると隣の棟の4階に届けてしまったようだ。
「だるっ!」
我が家の女子高生の影響で、私はことあるごとにこの言葉を口にしてしまう。
その日は気温が低くおまけにちょっと強めの雨が降っていた。
間違えた家の人にも迷惑だし、そのままにしておくわけにもいかず、脱兎のごとく外に飛び出し急いで下まで降りて、隣の棟の4階まで一気にかけ上る。
箱には我が家の住所が書いているのだから、堂々と持ってきていいのだけれど
ちょっと泥棒にでもなったような気分だった。
勝手に持ってくるのも少し悩んだけれど、9時過ぎていて真っ暗だったしおそらく頼んでもいないのだから荷物の事など気がついていない。
自分の荷物なのだしと、黙ってそのまま持ってきた。
持ってみるとお茶のあまりの重さに、鼻息荒くイライラしながら戻った。
誰だって間違える。
500ミリリットルのお茶を自分で運ぶのは重かったし、雨にも濡れて散々だった。
部屋に戻り、こんな事があって今運んだんだけど腹立つわ、と夫と娘に説明した。
「配達の人もうっかりする日もあるんじゃない」
「めっちゃ疲れてたんじゃない」
口々にそんな意見を言われて、はたと気がついた。
そうなのだ。
人は誰だって間違う日もあるのだ。
アマゾンカスタマーか、宅配業者に間違ってましたとメールをしておこうと思っていた自分が恥ずかしい。
言う必要はないのかもしれない。
少し悩んだけれど今回は言わない事にした。
だって自分が間違えてばかり。
今回そう思ったのは、夫や娘の言葉もあったのだけれど、今年始めた仕事場でのやり取りから思うこともあった。
50代での新しい仕事はなかなか覚えられない事も多い。
掃除の仕事は好きなのだけれど、繁忙期以外は事務作業や倉庫の作業など苦手な事をやることがあった。
若い頃は感じたことがなかった脳の衰え。
コロナの後遺症なのかと思うくらい、頭がはっきりしない感じ。
スッと覚えられない感覚があった。
メモを取ってノートを作って見ながらやっていてもうっかり間違える。
でも年齢のせいにするのは単なる言い訳で、もともと賢くないせいなのだ。
おまけに落ち着きがないし焦り症なのでよく間違う。
そのたびに凹むのだが、みんな口々に言う。
みんなそうだったんだよ。
掃除だったり事務作業だったり飛び飛びだし、毎日同じ事をしてないのだからすぐに覚えられなくて当然だって。
慌てなくていいよ。
間違わない人はいないから。
こんな風にみんな本当に優しいのだ。
俺もよくやったよ。
私も間違ったよ。
人を責めない。
間違いを指摘しない。
仕事をさせてもらうって、自分を客観的に見ることが出来る。
家で家族に威張り、人が何か間違えると速攻指摘していた自分が
いかに大したことがない人だったのかがよく見える。
自分だって間違うんだもの。
言わなくてもいいじゃん。
待てよ。
考えてみると宅配業者の人は本当に大変な仕事だ。
アマゾンで注文すると全部まとめて送ってくれればいいのに、発送元が違うのか別々に届いたりする。
重たい物も時々買う。
そのたびに4階まで持ってきてくれるって本当にありがたい。
どんだけネットで買うのやこの家。
って思われても何も言えないくらい配達が続くことだってある。
なので不在で再配達にだけはしない。
「間違ってましたよ。」
なんてメールを送って犯人捜しをされてお世話になっているドライバーの人が怒られたりしなくて良かった。
「慣れてない人かもよー。」
こんな事を言ってのん気に構えてくれる夫や娘は、寛容だと感心していた。
でも待てよ。
よくよく考えたら真っ暗な雨の中、隣の棟の4階からお茶を24本降ろして、もう一回4階まで登ったのはお母さんなんですが。
ちょっとおかしくないですか?
やつらに運んでもらえばよかった。
貴様らの持って行くお茶をな!!!
寛容もなかなかむずかしい。
ココ