全然大丈夫。
いつもそう言ってる人。
大抵大丈夫じゃない。
漢と書いておとこ。
夫は異常に強がりだ。
漢と書いておとこ。
たぶんそういうおとこに憧れている。
コロナになって三日間ほど高熱が続いた。
途中朦朧としながらの職場との電話でのやり取りで、上司の名前が思い出せず
心の中で相当焦ったようだ。
うわさに聞くブレインフォグなのか?
喉の痛みもひどく、夜中に何度かアイスノンと共に氷を持って行った。
めちゃくちゃ素直におくちをあけていた。
そのときの夫の心境は、
「やばい。なんとかして脳を冷やさなければ・・・」
そんなことをかんがえていたと後から言っていた。
話に聞いていたコロナは、ただの風邪のようでなんかちがう感じもした。
気のせいか以前より顔が長くなったような気がするのも戦いの後の顔なのか。
疲労感がにじみ出ている。
後は体力を取り戻すために栄養をとってゆっくりと。
そんな感じで残りの7日間を過ごそうとしていた。
ただ、コロナはそれで終わりではなかった。
噂には聞いていたが。
5日目に体が楽になってきてそろそろ退屈し始めたようなので、本を渡した。
物語を読んでいても意味が入ってこないと言うのでラグビーの本を買ってきたらスラスラ読めた。
その時も、脳を心配したらしいが好きな本ならば読めたようだ。
でも疲れやすい。
夫はたぶん怖がりだ。
こともなげに言ってるがきっと内心は心配なのだろう。
じつはさ・・・
「熱が下がったあたりから味は分かるけど匂いが全然しないんだよねン。」
匂いがしないくせに、常に薬品のような嗅いだこともないような匂いが自分の中で常にしているという。匂いは薬品から乾き物の魚みたいにどんどん変化したようだ。
7日目。
突然。
ジャンクフードが異常に食べたいと言ったのでマックを山ほど買ってきた。
夫が画面を見ながら選びネット注文をしてマックの駐車場受け取りをした。
私は陰性で隔離期間は過ぎていたが人とあまり接触せずに済む方法が増えたのは助かった。
夫は買ってきたマックを死ぬほど美味いと感動していた。
数日の栄養バランスや消化を考えた献立と、神経を使った消毒を考えると
マックで感動されるのもなんだか複雑だった。
でも、もしかしたら私を少し休ませようとしたんじゃないかと後からちょっと思った。
それか、
どうせ匂いがしないから連日のように何が食べたいか聞かれるのもしんどかったのかもしれない・・・
その日は久しぶりにちゃんと寝れたようだった。
つぎなるピンチ。
8日目。
レモンや、こしょう。
色々と嗅いで確かめる毎日。
変な匂いはだんだんしなくなってきたらしい。
黙ってクミンやスパイスを炒めていたら
「匂いがしてる!わかる。」と言い出し、それから少しずつ分かるものが増えてきた。
ただ自分のおならだけは毎回確認しても匂わないようだ。
ちょっと怖い、やばいと言っていた。
そんな感じで療養は終わりが見えてきた。
それなのに。
順調な日々かと思っていたら、
数日前から夫は隠し事をしていた。
足が一か所腫れていて激痛が走っていたようだ。
バレないようにケーキについてきた保冷剤を靴下にこっそり入れていた。
「全然大丈夫なんだけど一応ね。」
見ると少し赤い。
ちょっとさわったら
「いででででで」
全然大丈夫ではなさそうだ。
「隔離明けに休みを一日伸ばして病院に行かないと。」
「いや大丈夫。行かない。土曜日に行く」
このやり取りを延々と繰り返した。
10日間の隔離が終わったら仕事に戻らねば。
ただでさえ迷惑をかけているのだから一日伸ばすなんてとんでもない。
行かねば。
頑として聞き入れない強情な性格。
「あのさーこの世にその人が行かなきゃ回らない職場なんてないって」
「いや。行く。」
漢。
おんなこどもに何が分かるか。
背中にそんな空気をにじませながら、びっこを引いてとぼとぼ歩く夫。
結局。
診断をしてくれた先生に電話で相談したら、診てくれるということになった。
しぶしぶの夫を連れて行った。
痛くて靴がはけずサンダルで。
注射をしてもらい薬もだしてもらえた。
なんとか仕事を休まずに済んだ。
そして今日仕事に行った。
たのむから無理をしないでくれと思うが。
心配してくれた友人にメッセージのやり取りで言われた言葉。
旦那さんの意地っぱりも早く治ればいいね
残念ながら、たぶんこれだけは治らない。
でも、くれぐれもコロナには気を付けてと
特に同年代には思う。
ココ