小学校の高学年の、ある一日。
庭に、むしろを敷いて寝っ転がっていた。
毎日、嫌なことが色々あって、空を眺めていた。
飛ぶ鳥を見ながら、あんな高いところを自由に飛べるなんて、羨ましいと思った。
鳥は、自由でいいな。
些細な一日なのだけれど、その時の気持ちを、やけに鮮明に覚えている。
鳥にだってエサを探したり、移動したり、敵と戦いながらの子育てだったり苦労もあるのだろうが、当時はそんなことまで想像できるはずもなく、ただただ大空を飛べる事がうらやましかった。
そういえば、歌でイカロスはろうで固めた羽根で空を飛ぼうとしたけれど、子供心にも
そりゃあないだろう、少し考えれば分かるだろうとあの歌を聞くたびにイカロスを少し馬鹿にしていた。
大人になると、鳥を羨ましがったりはしなくなるけれど、それでも日々の暮らしの中で、鳥に出会うと、飛べるっていいなぁなんて思いながら目を止める。
思考はあの頃のまま、変わっていないようだ。
空を飛べるって気分がいいだろうなぁ。
鳥にも個性がある。
今の二つ前に住んでいた土地に、喋るカラスがいた。
末っ子がまだ二歳くらいの時だった。
誰もいない公園で遊んでいた時に
「おはよう」と確かに言われた。
めちゃくちゃ周りをキョロキョロして、声の主を探したのだけれど、誰もいなくて、
いたのは電柱に止まったカラスが一羽のみ。
後日、そこの公園に、再び末っ子といたら、犬を連れたおじさんが現われた。
おじさんが来ると同時に、どこからともなくカラスが飛んできて、おじさんの手から直接エサをもらっている。
カラスは、おじさんが連れている犬とも仲良しだった。
あまりに珍しいので話を聞くと、そのカラスがいつも仲間外れにされていじめられているから、エサをあげているという。
生まれつき弱かったようだ。
いつもそのおじさんがくると、カラスはエサをもらいに来ていた。
もしかしてこのカラス喋りますか?と聞いたら、おじさんは笑っていた。
でも、おじさんはいつもカラスに、「おはよう」と話しかけていた。
たぶん覚えたんじゃないかと、今でも思っている。
カラスは、子育て期はちょっと怖いけれど、よく見るとけっこう愛嬌を感じる。
今の集合住宅の前には、大きな木が生えていて、毎日鳥の大合唱なのだが、ここにも一羽変わった鳴き方のカラスがいる。
みょんみょん。とか、
時々、
わんわんみたいな声で鳴く。
いつかその声を録音したいのだけれど、なかなかうまくいかない。
でも確実に一羽いる。
変な鳴き方のカラスがいる。
可愛い。
変な鳴き声じゃない?⇧
わたし、馴染んでませんかね。
我が町には、お城があって、その周りにぐるっと囲むように堀がある。
堀には、鴨がたくさん住んでいて、観光客や、近所の人にエサをもらってのんびり暮らしているのだけれど、最近その中に一羽だけ違う鳥がいると、友人に聞いた。
早朝と夕方、犬の散歩で毎日通るうち、その鳥を見つけたようだ。
いつも鴨グループ達と一緒にいるらしい。
夫も通勤途中でその鳥を見るらしく、たぶん鵜じゃないかと言っていた。
馴染むために、なんとなく鴨のふりをしているようにも見えるようだ。
聞けば聞くほど、その鳥に興味がわいてきて、炎天下に自転車で探しに行ったら、その日は、あまりの暑さのせいか、堀のどこにも鳥がいなかった。
あきらめかけて、帰ろうとした時、少し陰になっている所で、並んで涼んでいる鴨の集団を見つけた。
ちょっとだけ距離を空けている⇧
少し遠慮がちに佇む姿が、物凄く可愛い。
みにくいアヒルの子もそうだけれど、一羽だけ違う子がいるって、なぜこうも、せつなく映るのだろう。
この鵜は、どこで生まれて、どんなきっかけで、ここに住み着いたのか。
仲間は、いなかったのかしら。
この鳥の事を、これからも見守りたくなった。
そして、有識者の方、この子が鵜で合ってるか教えてください。
ココ